「エスパス ルイ・ヴィトン東京」にて、ウェールズ出身アーティストによる個展「L>espace)(…」を開催
「エスパス ルイ・ヴィトン東京」は、ウェールズ出身のアーティスト ケリス・ウィン・エヴァンスによる個展「L>espace)(…」を2023年7月20日~2024年1月8日まで開催する。フォンダシオン ルイ・ヴィトンの所蔵コレクションを東京、ミュンヘン、ヴェネツィア、北京、ソウル、大阪のエスパス ルイ・ヴィトンにて展示する。「Hors-les-murs(壁を越えて)」プログラムの一環として行うこの展覧会は、国際的なプロジェクトを実施し、より多くの方々に作品をご覧いただきたいというフォンダシオンの意向を実現するものだ。
ケリス・ウィン・エヴァンスは、英国ロンドンのセント・マーチンズ・スクール・オブ・アートで美術学士を取得(1977-1980年)した後、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのフィルム&テレビジョン専攻で修士号(1981-1984年)を取得。映画監督デレク・ジャーマンの助手を2年間務めた後、ダンサーとのコラボレーションや、ロックバンドとのビデオ制作などを通じて独自の実験映像の制作をはじめ、1988年には短編映画『ディグリーズ・オブ・ブラインドネス』を発表した。90年代初頭には、彫刻またはインスタレーションに分類されるさまざまなメディアを用いた作品に移行したが、これらの映画的体験は実に強い印象を残した。彼の作品は写真的イメージやテキスト(多くはネオンで示される)、光、音、ビデオなどを通じて、空間における形の顕在化について探求するものだ。そして壮大なスケールでありながら、コンセプチュアルアートへの深い造詣により生まれる独特の距離感を持って存在する。エヴァンスが作り上げるのは、意味の迷宮。空間に形となって現れる引用や原典のあるテキストは、しばしば不可解な難問の様相を呈する。ポスト象徴主義や前衛の文学に垣間見られる遊びの要素や難解な側面が、インスピレーションの大きな源となっているのは明らかである。
テキストとネオンを用いた作品は、自らの作品もその一部を成す「間テクスト性」を脱構築しようとする試みを上手く表現している。例えば、ラテン語の回文を用いた作品では、シャンデリアのように吊るされたネオンの文字が丸く円を作り、支持体となっているガラスに反射して幾重にも重なり合う。エヴァンスは翻訳の問題についても取組んでいる。コンピュータに接続されている光が、その画面に流れていくウィリアム・ブレイクの詩や、フェミニスト理論家のジュディス・バトラー、神学者のミシェル・ド・セルトー、あるいはマルキ・ド・サドからの引用文をモールス信号の点滅で伝えた。光を用いて不明瞭なステートメントを伝えるという手法に象徴されるような矛盾を顕在化させるのがこの作家の特徴。彼の見方では、詩は「実験のエキゾチシズム」と呼ばれるものから生まれ、その多義性の重なりの中で、事実とフィクション、現実とその分身、打ち立てられた確信と矛盾した感情などの間にある曖昧な領域を探求することができるのである。
初期には光を用いた作品で知られたエヴァンスだが、その後、動きやテキスト、音を自在に置き換えたり、可視性の限界を探ったりと、他に類を見ない彫刻作品を展開している。フォンダシオン ルイ・ヴィトンがオープンする前の2007年に収集された今回のコレクションは、この点においても注目に値するものだ。
INFO
エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所:東京都渋谷区神宮前5-7-5 ルイ・ヴィトン表参道ビル7階
TEL:0120‐00‐1854
MAIL:contact_jp@louisvuitton.com
開館時間:12:00~20:00
休館日はルイ・ヴィトン 表参道店に準じます。
入場料:入場無料
会場内の混雑防止のため、入場をお待ちいただく場合がございます。
事前来館予約:https://jp.louisvuitton.com/jpn-jp/point-of-sale/japan/espace-louis-vuitton-tokyo 2023年7月13日(木)より予約受付開始