2021.10.21

将来の妊娠に備えて知っておきたい「卵子凍結」とは? 施術の流れやメリット・デメリット・体験談も。

将来、子どもが欲しい気持ちはあるけれど、パートナーシップやキャリアとの両立など、不確定要素の多い未来の妊娠・出産に不安を覚える人も少なくないのでは。そんな人が知っておきたいのが「卵子凍結」。今回は、基本的な流れやメリットやデメリット、副作用、妊娠率、費用など卵子凍結の基礎知識を、生殖工学博士であり卵子凍結のカウンセリングを行うプリンセスバンク代表の香川則子さんが解説。そして実際に卵子凍結をした経験のあるオア明奈さんの体験談をご紹介。

教えてくれたのは…プリンセスバンク代表 香川則子さん

京都大学で博士号を取得、世界最大の不妊治療専門施設の附属研究所で8年間の研究キャリアを積む。卵子・卵巣組織の凍結保存技術や臓器移植技術など、不妊症患者やがん患者を救う数々の世界初の医療技術を開発し、その臨床応用を実現。先端医療技術開発研究19年のキャリアと国内外の共同研究ネットワークを活かし、国内初の卵子バンクを設立。女性の人生創りを複合的にサポートすることを目指す。著書「私、いつまで産めますか? 卵子のプロと考えるウミドキと凍結保存」(WAVE出版)。

【目次】

  1. 卵子凍結とは?
  2. 卵子を凍結保存するメリット・デメリット
  3. 卵子凍結の流れ・方法は?
  4. 卵子凍結をしたオア明奈さんの体験談
  5. 卵子凍結のギモンに専門家がアンサー

卵子凍結とは?

卵子凍結とは、文字どおり「将来の妊娠に備えて卵子を凍結保存しておく」こと。自然周期では一ヶ月に1個の卵子が成長するところを、ホルモン注射で卵巣を刺激し、一度に複数個の卵子を採ることを目指す方法が大半。採卵したあとは将来使うときまでクリニックで保管をしておく。

「技術的には、不妊治療のひとつである体外受精で用いる方法を活用したものです。いつか子どもを産みたいけれど、今すぐの妊娠・出産は考えていない人にとって、妊娠のひとつの条件である卵子の質を、採卵したときのままで止めておくことができます。今パートナーがいない未婚の方が、ひとりで始められる妊活と言い換えることもできますね。また法律婚や事実婚をしているカップルも、精子の老化による不妊を同時に防ぐために、採卵手術で得た卵子を体外受精させ、着床直前まで体外で一週間ほど培養して育てて、受精卵として凍結保存(胚凍結)をすることも可能です」

ベストな状態で卵子凍結ができる目安は34歳まで

女性は、一生分の卵子がすでに卵巣内にある状態で生まれてくる。このため年齢とともに卵子の質が低下していき、35歳を境に流産率がグッと上がることに。

「卵子凍結は、ガイドライン上で39歳までの年齢制限が設けられています。ただ、ベストな状態で卵子凍結ができる年齢は34歳までです。25歳から34歳の日本人女性が体外受精で妊娠する割合は30%ほどで、そのうち20%ほどが出産に至ります。しかし39歳になると出産率は10%まで下がるのです。つまり34歳と39歳の卵子では、出産率が2倍も違うということになります」

卵子を凍結保存するメリット・デメリット

ここでは将来不妊で悩まないためにも知っておきたい、卵子凍結のメリットとデメリットを解説。

<卵子凍結のメリット>

将来の妊娠にひとりでも備えられる

卵子の老化による不妊症が心配という人、30代後半での妊娠・出産の可能性が高い人、また子どもを複数人欲しいと思っており、2人目以降の出産が高齢になりそうな人にとってもメリットに。採卵前の検査は、いわゆるブライダルチェックと同等な内容であり、自分の身体を見直すチャンスです。

キャリアを中断せずに済む

今は仕事に集中したい、キャリアを積みたい女性にとっても卵子凍結はメリット。若いときの妊娠力をキープしたまま凍結保存をすることで、精神的なゆとりが生まれ、将来設計がしやすくなる面も。

<卵子凍結のデメリット>

費用が高額

卵子凍結にかかる費用は、初診から卵子の保存までを1回として50万円〜70万円(医療機関によって金額に差はあり)。しかし、採卵できる数は人によって異なるため2回以上行うケースも。これに加えて、卵子1個あたり1万円程度の保管料が毎年かかる。

スケジュール調整は必須

初診から採卵までに8〜10回ほどの通院が必要で、採卵の1週間前には頻回となる。採卵直前には決められた時間に注射を打つことも。人によっては「明日、採卵」となるケースもあるなど、前もって予定が見えづらい側面がある。

妊娠が保証されるわけではない

卵子凍結をしたからといって将来の妊娠が保証されるわけではない。近年、特に注目されてきた精子の老化もまた、35歳以上の生殖高齢カップルの不妊とベビーの心身の健康を左右する大きな要素である。また、体外受精より自然妊娠の方が妊娠率が圧倒的に高いのは、どの年代でも同じ。

卵子凍結の流れ・方法は?

ここでは卵子凍結の大まかな流れを紹介。

STEP1. カウンセリング

卵子凍結を行うクリニックや施設でカウンセリングを受ける。疑問点や不安はここで解消しておこう。セミナーを開催しているクリニックや施設もあるので要チェック。

STEP2. 婦人科検診

血液検査や内診などを経て、卵巣と子宮の状態をチェック。採卵できるか否かを確認する。もし採卵前に病気が見つかれば、症状や部位によっては採卵より治療を優先することも。

STEP3. 卵巣刺激・排卵誘発

採卵の2週間前から注射や飲み薬でホルモン剤を投与する。吐き気や頭痛など妊娠初期のような症状が出る場合がある。

STEP4. 採卵手術

膣から器具を入れ、極細の針で卵巣にアプローチ。手術時間は20分〜1時間程度。全身麻酔、局所麻酔の方法があり、いずれも半日程度の日帰り入院で行う場合が多い。

STEP5. 卵子凍結・保管

−196℃の液体窒素で卵子を凍結。将来使う日まで保管する。

卵子凍結をしたオア明奈さんの体験談

メリット・デメリットや基本的な流れはあるものの、人によるところが大きいのも卵子凍結の特徴。ここでは、34歳で受精卵と卵子それぞれを凍結保存したオア明奈さんの体験談を紹介。

オア明奈さん

人生を祝うプロデューサー。人生に光を当てて、結婚式や誕生日などのお祝い機会、企業・地方自治体のイベントプロデュースを行う。CRAZY WEDDINGエグゼクティブプロデューサー、法人向けお祝い事業立ち上げを経て、2020年に独立。20・30代に向けて、人生を振り返って価値観を言語化するオンラインスクールを運営する傍ら、節目の迎え方をデザインするライフコンシェルジュとして活動の幅を広げている。2021年初書籍「人生肯定」をクラウドファンディングで出版。(公式サイト

やってよかったと思うことは?

「夫婦の時間や仕事を優先したかった私にとって、精神的な余裕が生まれたことが一番大きいです。凍結保存をしたから子どもを絶対に授かるというわけではないけれど、子どもを欲しいと思うタイミングで、もしかしたらひとつの保険や選択肢になるかもしれないと思いました。お金はかかりますが、時間を巻き戻して卵子を採ることはできないので、すごくいいお金の遣い方をしたと思っています」

悪かったことはある?

「やってみてわかったことは2つ。ひとつは精神的にも肉体的にも負担がかかること。ホルモン注射を打っている間はむくみや吐き気があったし、何度も通院し、毎日自己注射を打つのは、心身ともに少なからずダメージがありました。

もうひとつは人によってあまりに違うため、最終的にかかる金額を把握しづらいと思ったこと。体の状態、クリニックの方針、採れた卵子の数など、始めてみないとわからないことも多く、金額面で事前に比較検討ができないことも挙げられると思います」

どんな人に卵子凍結をおすすめしたい?

「特に私と同年代の30〜35歳前後の友人にすすめていますね。結婚してパートナーがいるけど、仕事が楽しかったり抜けられないポジションを任されていたりと、今後のライフプランと子どもを授かるタイミングを模索している友人が結構いるんです。子どもができたらキャリアを諦めなければいけないわけじゃないですが、そういう気持ちになる可能性もあると思うし、30代後半での妊娠・出産に不安もありますよね。だから年齢をひとつの区切りとして、自分の体や将来と向き合ってみるのはおすすめしたいです」

卵子凍結のギモンに専門家がアンサー

卵子凍結に痛みや副作用、リスクはある? 卵子は何個保存しておけば安心? 保険は効くの? などのギモンに香川さんがお答え。

痛みや副作用・リスクはある?

「採卵は全身麻酔や局所麻酔を用いて行うので、痛みの心配はあまりありません。ただし、臓器損傷や出血、炎症などのリスクはあります。また排卵誘発剤による副作用には、妊娠初期のような症状や腹部膨満感が出ることもあります。そのほかには血栓症のリスクがあるので禁煙になったり、採卵前後は過度な運動は禁止になったりします」

卵子はいくつ凍結保存しておけばいい?

「一般的には、10個程度を目安にするクリニックや患者さんが多いです。凍結卵子1個あたりが出産に至る確率は10%前後と言われているためです。医学統計上は2個以上あればいいとしている研究報告もあり、細かくいえば凍結の方法によっても出産率には雲泥の差があります。ご自身が何個保存しておけば安心できるのかは個人の価値観(挙児希望の強さ、精神面の安定度)によるところが大きいと言えます」

保険は適応される?

「卵子凍結は、保険が適用されない自由診療(自費)です。しかし、将来的に凍結卵子を用いた体外受精をする場合は、自治体によっては不妊治療費助成制度の対象となります。そのときに住んでいる都道府県と市区町村にどういった助成金の制度があるか調べておくのもいいでしょう」

Words Kaori Hasegawa
Edit Seimu Kawahara

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