ミュージカル『夜の女たち』製作発表会見 江口のりこ、前田敦子らのコメント到着!
2022年9月3日(土)〜19日(月・祝)まで神奈川・KAAT神奈川芸術劇場<ホール>ほかにて、KAAT神奈川芸術劇場プロデュース ミュージカル『夜の女たち』が上演される。公演に先駆け、出演者の江口のりこ、前田敦子、伊原六花、前田旺志郎、大東駿介、北村有起哉、演出の長塚圭史による製作発表会見が行われた。各登壇者のコメントをお届けする。
長塚圭史(演出)
1948年に公開された溝口健二監督の映画「夜の女たち」を観た時の衝撃が忘れられません。アメリカの占領下にあった時代に、実際に大阪釜ヶ崎で撮影された、劇映画でありながらもほとんどドキュメンタリーのような印象を受けました。第二次世界大戦後、日本がアメリカの占領下におかれた時代が確かにあって、それが私たちの現在に脈々と繋がっている。このことが忘れ去られてしまっているような現在に対して違和感を感じたのが、この作品を舞台化するきっかけでした。日本人の価値観が真っ逆さまにひっくり返るような敗戦の時代を描く時に、どうしてもただ暗い側面にばかり引っ張られて行きがちです。けれどミュージカルなら、言葉にならない心の内を歌いあげることも出来れば、その時代の空気そのものを歌にすることも出来る。そして、何よりも、困難な中でも、力強く生きた庶民の姿を鮮やかに描き出せるのではないか、と思ったのです。今年のメインシーズン<忘>の最初の作品として、時代の変換期に、庶民がエネルギッシュに生き抜いた姿を、荻野清子さんの素晴らしい音楽と共に描きたいと思います。
江口のりこ
ミュージカルは初めてですので、毎日稽古場で楽しいと思ったり楽しくないと思ったり、あっち行ったりこっち行ったり頑張っているのですが、一緒に演じる俳優の皆さんがミュージカル畑の方ではなく、私と同じような俳優の皆さんなので心強く、大丈夫だと思います。様々な取材で、この作品が今の時代に問いかける意味や社会に対してのメッセージを聞かれましたが、まずは台本に書かれていることをやるのに必死というかそれが今の正直なところです。この映画を見たときにすごくエネルギーのある作品で静かな作品だ、と思ってどこに音楽が入るんや、どこで歌うんやと思って謎でしたけど、実際稽古をしてみると、台本にある部分のシーンやセリフを歌うことによって底上げされるんです。それを感じたときにストレートプレイではなく、ミュージカルにする意味が腑に落ちました。そこが“セリフを歌う”という楽しさかなと思います。
前田敦子
ミュージカルは初めてなので、お稽古が始まってみたらあまりにも本気でちょっとびっくりしました。歌の練習から入って、セッションをする形で台本を読み合わせながら歌に入っていくという流れを作っていただいています。歌にはパワーがあると実感しています。まずは音程にそって歌えるようにならないといけないのかな、と思っているところで、そこからどうやってセリフとつなげて落とし込んでいくんだろう…とまだわからないことだらけなんですけど、でも皆さんがいるから自然とその役になっていく…その作業はとても楽しいです。私個人としては、AKB48でポップスを歌っていましたが、実は楽譜が読めないので、読み方を教えていただくところから始めています。いまは新しいことをやっているな!という気分です。(江口)のり子さんが大好きなので、共演できてとっても嬉しいです。のり子さんが歌っている姿がとても愛おしいので、早くみなさんに観ていただきたいです。
伊原六花
長塚さんもお話しされていましたが、この作品を初めて見たときは衝撃がすごく、この作品をミュージカルでどう表現されるのかなと思っていました。楽曲を聞いたときに台詞のイントネーションがそのまま楽曲になったものばかりで、心境だったりを音楽にのせて届けることが出来る作品になるんじゃないかとすごくワクワクしています。今本読みをしていますが、フラットで自由なキャストの皆さんばかりなのでこれからの稽古がすごく楽しみだなと思っています。事実としてこのような時代があるなかで、自分が思っている感覚とその当時生きていた方の感覚のとらえ方が違うなと思います。久美子は夏子さんにすごく憧れがあるし、明るい力のある女の子だなと思うので、この時代だからこそ、新しく流れてくるものに憧れる気持ちとかをもっと皆さんと話し合って作り上げていけたらと思います。
前田旺志郎
僕はミュージカルに出演するのが初めてなんですが、歌稽古でみんなで歌っているとものすごく楽しいです。たくさんの人の声の力というか、歌の力だと思いますが、歌っているとワクワクしてきて、気持ちが上がります。ほぼ毎日、お風呂場で歌うくらい歌うことは好きなのですが、ミュージカルの歌唱と普段のポピュラーな歌とはやはり全然違うので、難しいなと感じています。役の生きてきたバックグラウンドや感情が、歌にまっすぐに書かれているので、歌うことよりも大切なものがたくさんある気がしていて、それを表現するのが難しくもありますが、キャストの方々と挑戦できるのは幸せです。一人で歌うのは不安で、まず人前で歌うことに慣れていないので、稽古場でも声が出ないほどめちゃくちゃ緊張していますが、みなさんにお届けするときには、自信をもって、胸を張って、歌えるようにできればと思います。
大東駿介
初日までまだ1か月半ありますが、すでに沢山稽古をしていて、譜面を見ながらの歌稽古をしていたかと思うと、圭史さんに「ちょっと立ってみようか」と言われ、すぐ立ち稽古が始まりました。歌稽古の時から楽曲が素晴らしいなと思っていたのですが、立ち稽古をしてみると、キャストの方々が歌を役に重ねることで、言葉と歌のはざまのような、血が流れている気がしてきて、ドキュメンタリーのような原作映画の情景が歌に乗って見えてくるので、ミュージカルってすごいなとめっちゃ思っています。この映画は本当に静かな映画で、これがミュージカルになるってどうなるんだろうと思っていたのですが、難しいようなセリフでも歌にすることで、音楽として届けられるようなメッセージがあったりして、歌うことのハードルは高いですが、すごく希望を持ってやっています。素晴らしい楽曲が個々のキャストに作っていただいたので、9月を楽しみにしていてください。
北村有起哉
「夜の女たち」というタイトルから想像していましたが、台本を読んでみて、これを舞台でやるの?大丈夫なのか?できるの?という思いがすごくありました。でも、そういう時に限って火が付くんですよね。これはどうなるか本当にわからない、という作品の匂いにつられてしまう本能的なものが役者にはあったりする。まさにこの作品はそんじょそこらのエネルギーじゃ太刀打ちできない、戦後間もないころのカオスを我々の肉体で歌い上げて表現しなければならない、想像力をふんだんにふくらませて……。もともと歌は好きなのですが、歌稽古してると、学校の音楽の教室の授業を思い出したりします。今は音程やテンポをちょいちょい間違える日々ですが、自分が楽しくないと観ているお客様に伝わってしまうと思うので、まずは自分が楽しめればと思っております。
溝口健二監督映画「夜の女たち」を舞台化、 長塚圭史が創る初めてのオリジナルミュージカル。 忘れてはならない時代、占領下を生き抜いた日本人たちの物語。
夫を戦争で失い、「闇の女」へと堕ちていく主人公・大和田房子には、個性あふれる演技と唯一無二の存在感で長塚からの信頼も厚い江口のりこ。戦争で全てを失い、自暴自棄になり進駐軍が駐屯する ホールでダンサーとして生きる房子の妹・君島夏子には、映像のほか、昨年は『フェイクスピア』(2021年、作・演出:野田秀樹)出演など、舞台でもコンスタントに活動する前田敦子。女たちを夜の「闇」から救い出そうとする病院長に個性あふれる実力派・北村有起哉。戦後の闇ブローカーのような仕事をし、行き場を失った房子を雇い、また愛人とする栗山商会社長・栗山謙三には、映像、ドラマで幅広く 活動する大東駿介。時代に翻弄される若者、房子の義妹・久美子には『ロミオ&ジュリエット』(2021年、小池修一郎演出)のジュリエット役の新鮮な演技が記憶に新しい伊原六花、久美子を騙す学生・川北に「彼女が好きなものは」(2021年、草野翔吾監督)をはじめとする映画、舞台で活躍する前田旺志郎。 その他にも、房子の戦死した夫、大和田健作には、『王将』-三部作-(2021年、構成台本・演出:長塚圭史)の坂田三吉役も好評を博した福田転球、古着屋の女主人・富田きくには劇団四季出身のベテラン北村岳子など、実力派俳優が揃った。
音楽は、日本のミュージカル界をけん引する荻野清子。長塚とは、井上ひさし作『十一ぴきのネコ』(2012年)以来、多くの作品でタッグを組んでいる。振付は、ダンサーとしての活躍はもちろん、『キレイ』、『キャバレー』、『業音』(松尾スズキ演出)、『幻蝶』(白井晃演出)など多くの舞台作品の振付を手 がける康本雅子。
長塚圭史が上演台本、演出を手掛ける、初めてオリジナルミュージカルとなっている。
【あらすじ】
戦後すぐの大阪、釜ヶ崎。「日没後、この付近で停立または徘徊する女性は闇の女と認め、検挙する場合があります」と札が立っている。大和田房子は焼け出された後、病気の子を抱えて困窮していた。夫は戦地からまだ帰っておらず、両親や妹・夏子は終戦を迎えたものの消息不明になっている。姑や義理の妹・久美子と同居しながら、着物を売り払ってなんとか暮らしている。そこに届いたある知らせに絶望する房子。その後、ダンサーとなった夏子と偶然再会する。房子、夏子、久美子、3人の女たちの壮絶な人生と、凄まじい生命力を描いた人間ドラマだ。
KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース ミュージカル『夜の女たち』
原作:久板栄二郎 映画脚本:依田義賢
上演台本・演出:長塚圭史
音楽:荻野清子 振付:康本雅子
出演:江口のりこ 前田敦子 伊原六花 前田旺志郎 北村岳子 福田転球 大東駿介 北村有起哉 他
<神奈川公演>2022年9月3日(土)〜19日(月・祝)KAAT 神奈川芸術劇場[ホール]