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2022.11.03

トラベルジャーナリスト・寺田直子さんが考える、大切な人と過ごすためのリュクスなお宿とは【GLITTER HOTELS AWARDS 2022 1/2】

「豪華だから、きれいだから、話題だから」と、そんな認識だけではもったいない。リュクスのお宿の本質とは何か?を知ることは、大人として、人生を謳歌するためのエッセンスとしてあっていいのではないのでしょうか。世界中を旅したジャーナリストが考えるリュクスの本質についてのエッセイをぜひ。


トラベルジャーナリスト 

寺田直子さん

旅歴35年。訪れた国は約100カ国。ホスピタリティビジネス、世界の極上ホテル&リゾートに精通。

雑誌、ウェブなどに寄稿するほか、ラジオ出演、講演など多数。

2021年から東京都・伊豆大島に拠点を移し執筆活動のほか、古民家カフェHav Cafeを運営。

 

かつて、一流ホテルの総支配人に「ラグジュアリーとは?」とたずねたことがある。そのときの答えはこうだった。

「今日、ここに座るゲストのことを思いながらテーブルに花を飾ること」

豪華な客室や装飾は予算をかければ誰でも作れるもの。心からのおもてなしこそが最も気高く、贅沢(リュクス)なのだと教えてくれたのだ。さらに、こうも語ってくれた。「ラウンジで一杯のコーヒーを注文した方も、何百万もするスイートルームを予約したビリオネアも私たちのゲストとして比較することなく至高のおもてなしをするのがホテルのミッションです」

ジャーナリストとして、そしてひとりのゲストとして世界各地、国内のホテルに滞在するたびにそのときの言葉をよく思い出す。カップルで、あるいは家族や女子旅、ソロ旅など。国籍、年齢、属性いっさい関係なくすべてのゲストに一生に一度の忘れがたい体験を提供すること。 ホテルという言葉がラテン語で「もてなす」「保護する」という意味からきていることを考えれば納得するだろう。

敷居が高く思う高級ホテルやリゾートが実はとてもフレンドリーでもてなし上手なことにも経験を重ねていくと気づかされる。私がとまどったり困ったり している様子をチラリとでも見せると電光石火、すばやく寄り添い、「ミス・テラダ、どうかなさいましたか?」と柔らかく言葉をかけてくれることの安心感といったら。不慣れな海外でならなおさらだ。

ホテルが大切に思うのはゲストだけではない。限りある地球の環境と共存するためサステナブルな取り組みにも積極的だ。大手ホテルグループはプラスチックのストローの使用を世界規模でやめた。大量に廃棄されていた生ごみをコンポストにして堆肥を作り、野菜やハーブを育てエレガントなカクテルに生まれ変わらせたホテルも登場している。乱獲により個体数の激減した魚を使用せず、生態系をおびやかさずに食べることができる魚介のみをレストランで提供するホテルもある。さらにボランティアや食育プログラムなどを通して地域・社会への貢献なども多岐にわたる。

「ノブレス・オブリージュ」という言葉がある。「高貴な存在には社会に対しての義務が伴う」という意味があり、その意義を体現するのがリュクスなホテルなのかもしれない。私たちが心がけるべきは、社会的義務をキッチリと果たしながら、最高峰のおもてなしをすべての人に与えてくれるホテルを賢く選び、彼らのミッションをゲストとして支持すること。なんていうことはない、ステキな客室に泊まり、ダイニングで美食を堪能し、スパで愉悦の時間を楽しめばいいだけのこと。実に簡単だ。

一流の場所には一流のゲストが集うので、ロビーラウンジやレストラン、バーは華やかな社交の場だということも重要なポイントだ。フロントでのホテルスタッフとの会話、レストランでのオーダーの仕方やワインの選び方、さらにチップの渡し方や昼と夜の洗練されたドレスコードなど紳士淑女たちのスマートさは人生の先輩たちのお手本そのもの。彼らのようになりたいと憧れることだろう。ホテルなら ではのきらびやかな空間と凛とした緊張感。最初は誰でも気おくれするけれど、少しずつ時間を重ねていくとやがて場慣れをし、楽しみ方を覚え、ホテルの魅力は徐々に深まっていく。ゆっくりと自分がその空間にふさわしいゲストに なっていく喜び。それは感性を磨き心の贅沢へと確実につながっていく。そう、リュクスなホテルとは成熟した大人へのレッスンの舞台であり、人生を豊かにする非日常の極上体験にほかならない。まずはそのワンステップとしてお気に入りのホテルを見つけてみてほしい。めくるめくホテルライフが待っているはずだ。

 

Terada’s Selections

お宿に精通する寺田さんの心に響き、何度でも訪れたいと感じるリュクスなお宿はコチラ。

パレスホテル東京

戦後、国有国営ホテルを前身とした 名門ホテル。2012年、3年の歳月をかけて一大リニューアル。一流のサービスとエレガントな美意識の融合が新時代のリュクスなホテルを体現。旧ホテルからのスタッフが現役で最上質のおもてなしを提供するホスピタリティの厚さには定評あり。新しく誕生したプレミアスイートは中・長期滞在にふさわしいくつろぎの空間と早くも高い評価を獲得。皇居を望むバルコニーからの緑あふれる癒しの景色もここならでは。

 

WEAZER 西伊豆

2022年秋、西伊豆にオープン予定。エネルギーと水を100%自給するオフグリッド型居住モジュール「WEAZER」のファーストモデルを活用した究極のサステナブルなホテル。駿河湾を望むロケーションの完全独立ヴィラはオーシャンビューの露天風呂を配し、スタイリッシュなデザイン性。滞在中は専属コンシェルジュがもてなしてくれる。夕食は江戸時代から続く名家の屋敷と蔵を使った姉妹宿「LOQUAT 西伊豆」で地産地消イタリアンを堪能。

 

Edit&Words Nahoko Ishii

 

※本記事は発売中の『GLITTER vol.5』に掲載されています。

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