七海ひろきinterview 舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語 新キャストで挑む新たな刀ステ
2023年2月から東京・大阪で上演される舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語は、源氏物語をコンセプトにこれまでの刀ステ本丸とは異なる切り口で、新たなキャスト陣で構成された華やかなビジュアルがすでに話題を呼んでいる。細川家の名刀・歌仙兼定を演じるのは、元宝塚歌劇団の男役スターで、現在は舞台、ドラマ、声優など活躍の場を広げながら表現者として常に高みを目指す七海ひろき。刀ステ作品には、2020年上演の科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶、2022年上演の舞台『刀剣乱舞』綺伝 いくさ世の徒花に出演し、歴史上の人物を好演した。3度目の出演となる本作、初めて刀剣男士役を演じることへの心境と、刀ステ最新作へ臨む熱い想いについて話を聞いた。
アクション監督に“歌仙兼定はとにかく重い。一振一振の圧が重いのが歌仙兼定なんだよ”と言われた
--刀ステには「綺伝 いくさ世の徒花」に続く出演となりますが、本作では初めての刀剣男士役ということで、歌仙兼定役を務める今の心境を教えてください。
「とにかくやる気がみなぎっているのと、ひとりではなく座組のみんなと一緒に挑んでいこうという気持ちがすごく高まっています。最初はプレッシャーや不安ももちろんありました。いろいろ考えてしまったり、どうなるんだろうと不安に思ってしまうことも度々……。でも、刀剣男士役のキャストの方々と殺陣の稽古をした時、お互いに高め合っていこう!という雰囲気がすごくあって。できない部分もまだまだたくさんあって、やらなきゃいけないこと、役としてどう深めていくかを考えたりもしないといけないですが、挑むことへのワクワクした気持ちというか、躍動感を感じています。ここからレベルが上がっていく楽しさ、みなさんと作品を作っていく楽しさをもっと共有できたらいいなと思っています」
--刀剣男士役には、元宝塚歌劇団の方々がいらっしゃいますね。お稽古の様子はいかがでしょうか? 本シリーズは殺陣が見どころのひとつでもありますが。
「宝塚歌劇団在団中や退団してからも殺陣はやらせていただいていますが、舞台『刀剣乱舞』のアクション監督に教わるのは、みんなは初めてで。今(取材当時)はまだ基礎を教わっている段階で、挑戦への意欲が湧いています。私は綺伝公演以来の殺陣ですが、その時は薙刀でしたし、歌仙兼定は打刀ということでまた一から教えていただいている状況です」
--これまで刀ステでは歌仙兼定を和田琢磨さんが演じていましたが、今回ご自身が同じ役を演じることで役作りのこだわりや意識していることはありますか?
「和田さんの歌仙兼定は、舞台袖から見ていても過去作を見ても、雅な佇まいとは裏腹に、戦闘場面では力で押していくという力強さを感じていました。殺陣のお稽古でもアクション監督に“歌仙兼定はとにかく重い。一振一振の圧が重いのが歌仙兼定なんだよ”と言われたりもして。本作でも殺陣はとても重要になってくるので、魅せ方を研究しつつ、戦っていない時の歌仙兼定の佇まいなどを自分なりに広げていこうと思いました。自分のイメージする歌仙兼定像を固めていけるように、資料やイラスト、キャラクターのボイスを自分の中に取り入れながら、ちょっとずつ役に肉付けしていきたいです」
風流だったり雅だったりを言葉で表現するのが好きなところは、歌仙兼定との共通点かもしれない
--自称文化人で雅なことや風流を好む性格なのに武闘派でそのギャップが歌仙兼定の魅力でもありますよね。そんな歌仙兼定と共演の刀剣男士との絡みも楽しみですが、稽古場ではキャストの皆さんとどのように過ごしていますか?
「(取材当時)まだ本稽古が始まっていないので、全キャストさんにお会いしていない状況ではあるのですが……連絡先を知っているので、それぞれ役作りをしているなか、“この前、稽古に行ってきたよ”みたいな情報交換や共有をしています」
--光源氏役の瀬戸かずやさんと源氏物語がテーマの展覧会に行かれたそうですが、役作りや作品作りに参考になる部分はありましたか?
「少しでも作品に対するイメージが膨らめばいいなと思い、一緒に行きました。源氏物語を深く知ることによって、より作品への理解が深まる部分もありますし。ほかにも、源氏物語を題材にしている作品や、宝塚の作品、平安時代を題材にした映画も観たりして。いろんな方が光源氏を演じていたりもするので、映像から見えるイメージを大事にしようと思って観ています。物語の登場人物なども改めておさらいしている段階です」
--役作りをしている段階で、自分との共通点や通ずるものはありますか?
「“歌を詠む”ってロマンがありますよね。学生時代に、和歌や百人一首の意味を調べるのが好きでした。そこまで詳しいわけではないけれど、自分なりに“この歌は好き”と思ったりしていて。言葉や文学は学生時代に好きだったな……と思い出して、懐かしい気持ちになりました。花や自然など、そういう景色を自分の中に取り入れて、風流だったり雅だったりを言葉で表現するのが好きなところは共通点かもしれません」
--七海さん自身も何かを表現することがお好きなんですね。
「そうですね。お芝居や歌や声優のお仕事だったり……いろいろな表現の出口があって。長年やってきているということもあり、一番落ち着いた気持ちで表現できるのは舞台です。声優のお仕事は、宝塚を辞めてから挑戦していることなので、慣れてはきましたが、まだまだわからなかったり戸惑ったりすることがあります。それでも、今後も声優のお仕事はやっていきたいです。どんなお仕事でも、いつも試行錯誤しながら“ここで終わりじゃない”と思いながら表現や自分のキャパシティを広げていきたいと思っていて、舞台でも千秋楽まで“正解はまだない”と最後まで攻めの姿勢を貫くようにしています」
今までのシリーズの魂を受け継いで、私たちなりの舞台『刀剣乱舞』を表現したい
--今までも数々の舞台を経験してこられていますが、舞台『刀剣乱舞』だからこそ特に意識していることはありますか?
「科白劇も綺伝の時も、刀剣男士を演じている皆さんはその刀剣男士に対しての愛や情熱がすごく強いんです。その気持ちを込めて稽古や公演を過ごすんだな、と近くで見ていて感じました。刀ステの一番最初の作品から、どんどんキャストの気持ちが高まっていっているような、よりクレッシェンドしていく様子をそれぞれの作品に感じるので、私たちもその魂を受け継いで、私たちなりの舞台『刀剣乱舞』を表現したいと思っています。これまでとは異なる部分と、受け継ぎたい部分があるので、その融合が難しいと思いますが。でも、それはお稽古中にみんなで作っていくものなので、まずは稽古の1日1日を大事に責任を持って過ごしたいです」
--そんな中でも楽しみなことはありますか?
「平安時代のお着物や、えぼし、扇の形って本当に美しいですよね。平安時代は、美しい日本を一番表現している時代なんじゃないかと個人的に思うので、刀剣男士の戦闘シーンももちろん楽しみですが、刀剣男士以外のキャスト陣の佇まいやお芝居がとても楽しみです」
--それでは、本作の見どころを教えてください。
「このキャストでやるからこその、より華やかで美しい舞台『刀剣乱舞』にしたいと思っています。今までの自分よりもさらにひとつ階段を登りたいですし、作品としてもより高みに登れればいいですよね。あとは先ほども話に出た、殺陣は見どころです。本気で殺陣をする時は、殺陣の上手い下手というよりも、生きるか死ぬかの気持ちのぶつかり合いなんです。そのぶつかり合い、気持ちの戦いをお客様に届けられるようにしたい。華やかさも殺陣も、ファンの皆さんに満足してもらえるような舞台を作りますので、ぜひ楽しみにしていてください!」
今日より明日、さらに1年後、何年後もキラキラできる人間でいたい
--媒体名の『GLITTER』にちなんだ質問になりますが、七海さんから見て“輝いているな”と思う人はどんな人ですか?
「自分のやるべきことを全身全霊で気持ちを込めてやっている人が輝いていると思います。“ああしよう、こうしよう”と考えるというより、やるべきことを一生懸命やっている人ですね。自分の信念を持って、“これを突き詰めたい!”と頑張っている人を見ると、一緒に切磋琢磨して私も頑張ろうと思えますし。懸けるものは人それぞれですが、ひとつのことに集中して、命を懸けている人は輝いていますよね」
--七海さんが、これまでの人生でご自身が一番輝いていた瞬間はいつになりますか?
「一番輝いているのは“今”でありたい(笑)! 子どもの頃も、学生の時も、宝塚歌劇団在団中でも、さらには2年前、1年前であろうが、その時が一番だといいですよね。常に“今”が一番になるように前に進みたいなと思っています」
--“常に自分を更新し続ける”ということですね。
「後ろを振り向く時もあります。振り向くからこそ、その時の自分を見てもっと輝きたいなと思ったり、思い出に浸ることも大事です。それを踏まえたうえで、今日より明日、さらに1年後、何年後もキラキラできる人間でいたいなと。それがうまくいかなくて空回りすることも多々ありますが、空回っている自分もちゃんと受け入れます。“空回っちゃったな。明日はもう少し気をつけよう”って。落ち込む時もあるけど、できればポジティブでいたいんです」
不器用だからこそ、自分が今できる精一杯のことや最善を求める
--では、輝くための秘訣や心構え、大切にしている想いを教えてください。
「わりとひとつのことしかできない不器用なタイプなので、不器用だからこそ、自分が今できる精一杯のことや最善を求めて過ごしています。集中してしまうと周りが見えなくなることもあるんです」
--趣味などものめり込んでしまうタイプですか?
「1回ハマると長いですね(笑)。今は、朝晩に紅茶を飲むこと。朗読劇『-The Super Reading Show- 紅茶王子』という作品で、紅茶の奥深さを知ったらハマってしまって。ジンジャーやピーチティーなど、香りがいい紅茶を飲むとすごく癒されます」
--ひとつのことに集中するのは、作品に入る時は良いのではないですか?
「そうですね。お稽古中は、台本を読んだり作品の中でやるべきことに集中できます。原作があったら原作を読んだり、その作品にどっぷり染まります。今はとにかく舞台『刀剣乱舞』のことを考えていたい。綺伝の時も調べたのですが、また改めて歌仙兼定の歴史を調べて、外側も内側も歌仙兼定に近づけるよう、もっと役作りに励みたいです」
■PROFILE■
七海ひろき
1月16日生まれ、茨城県出身。宝塚歌劇団に入団(89期)。宙組配属後星組に組替え、男役スターとして活躍。2019年3月24日に退団し、2019年8月キングレコードよりメジャーデビュー。2019年11月8日いばらき大使就任。俳優、声優、アーティストなど多方面で活動中。
■INFORMATION■
舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語
<大阪公演>2023年2月16日(木)~2月19日(日) オリックス劇場
2月4日(土)にライブ配信、2月19日(日)にはライブ配信とライブビューイングが決定!
Photos Yukie Abe / Hair&Styling Kazuki Shiota / Words Ayako Nagaoka / Edit Kaori Watabe