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2022.06.15

成田凌×葵わかなinterview 現代に蘇る衝撃作『パンドラの鐘』での挑戦と人生の変化を語る

1999年、野田秀樹作、蜷川幸雄と野田秀樹の2人が同時期に上演し話題となった舞台『パンドラの鐘』が、初演から23年ぶりにシアターコクーンにて、気鋭の演出家・杉原邦生の手で上演される。歴史や人間に関する未解決の問いを投げかけつつ、高いエンタメ性で感動を呼んだ『パンドラの鐘』。今回主演を務めるのは、舞台初出演の成田凌と、2019年の舞台初挑戦以来、ステージでも存在感を示す葵わかなだ。作品への想いと、『GLITTER vol.4』の大テーマである『Transformers! NEW OLD/NEW ME!! 〜変化変容で新しい自分へ〜』に絡めたインタビューをお楽しみください。

生きてるけど死んでいるようなイメージをミズヲに抱いている。そんな場所を行き来しながら、らしさというものを見つけていきたい(成田)

――『パンドラの鐘』ではおふたりは役をどう理解して、そこに自分のカラーをどう表現していきたいと思っていますか?

成田「正直、自分の色というものがわかっていないので、今はただ、ミズヲという役に向き合っています。燃えているけど水であり、生きてるけど死んでいるようなイメージをミズヲに抱いていて。そんな場所を行き来していると、らしさというものを見つけていけるのかなと思ってます。でも、それは観てくれた方が決めることだと思うので、とにかく、一生懸命がんばるだけです」

――ミズヲは象徴的な存在ですが、どういう人間として描こうとされているのでしょうか。

成田「表面的に見たら激しい人間のようだけど、ミズヲが求めているのは、一番静かな世界なんです。そのために、激しく生きている。いろいろな面を持っているけど、真っすぐです。言っていることもころころ変わりますけど、生きているのか、死んでいるのかというような世界で、ミズヲは息をしている。だからこそ、激しくありたいなと思っています」

「ヒメ女という役に関しては今、(杉原)邦生さんが演出されているのでこういうキャラクターになるんだ、と感じることが日々、多くて。ミズヲもそうだと思いますけど、邦生さんの中でヒメ女という役はこういう人間であってほしいんだなっていうことを今、くみ取っていっている感じです。ゆくゆくはそれを自分のものにして、私だけのものが加えられたらいいなと思っているところです。演出を受けていて、ヒメ女の大切なところは、14歳という年齢にもあるかなとも思っていて。無知で真っ白な少女がこの物語の中でひとつ成長して、終わりを迎えるという、すごいスピードの中にいるんですけど、そこに何かのドラマを加えたいなと思っています」

成田「ヒメ女、すごく魅力的ですよ」

「ありがとうございます。難しいですけど」

成田「邦生さんは、ちゃんとラブストーリーを描こうとしてますよね」

「意外とそう! 台本のト書きには特にそういう表現はなくて、そう見ようと思えばそう見えるし、そうじゃない見方もできるし、どうとでも理解できるような台本なんです。だから、演出によっても全然違う作品になるし、役者によっても全然違う役になる、そういう作品」

――ラブストーリーにしようとしているのは、具体的にはどういう演出で感じるんですか?

「たとえば邦生さんからは、『ミズヲが来たら、ヒメ女はキュンしないと』って言われます(笑)」

成田「わかりやすいよね」

――よりふたりの存在を際立てる演出なんですね。争いや未曽有の事態に混乱している今の時代にこの『パンドラの鐘』が届けられることに必然性を感じるのですが、おふたりはこの作品を観る人に、どういうふうに楽しんでもらいたい、どういうふうに受け取ってもらいたいと思っていますか?

成田「自由に受け取ってもらえたらいいと思います。重いテーマもありますけど、その事柄をそのまま扱ってるわけではないですし。僕がひとつ思うのは、いろいろな人の目がパンドラの鐘というものを見ているということ。言葉にするのが難しいんですけど……ただ、難しく考えようと思えばいくらでもできるんですけど、お芝居として難しいことはないですし、観て聞いて楽しめる壮大なエンターテイメント作品です。深く考えてくれる人もいれば、シンプルに、ああ、楽しかったと感じる人もいていいと思います。楽しく観ていただきたいですね」

「こういう情勢になる前から上演は決まっていたと思うんですけど、今の時代にこの作品が重なったのは、出演者としてのエゴかもしれないけど、運命的なものを感じます。ひとつの作品やいち役者にそれほど大きなパワーはないのかもしれないけど、私はエンタメの持つ力を信じているひとりなので。この作品を今の時代に上演できて、そこに参加できていることがとても幸せです。今だからこそこの作品を観て感じ入ってくれる人が多いかもしれないけど、成田さんが言ったように、この作品の持つショー感やエンタメの素晴らしさが第一にあって。演劇は日常を救ってくれるものだけど、片手間に楽しめるものでもあるし、人によってどんな存在でもいいと思うんです。この作品も、誰かのそういう作品になる可能性が大きい演目だと感じます」

圧倒的に変化が好き。変化しないと維持もできないから、いつも変わっていようって気を引き締めてます(葵)

――『GLITTER vol.4』の大テーマである『Transformers! NEW OLD/NEW ME!! 〜変化変容で新しい自分へ〜』にについてもうかがいます。芸能の世界は変化が多くて、変わっていくことも、周りの変化の中で自分の変わらない部分を守ることも大事だと思うのですが、おふたりは、変化することと維持すること、どちらが好きですか?

「私は、圧倒的に変化ですね。変化していないと維持もできないと思っているんです。これぐらいでいいかって、変化をやめた瞬間に下がり出すみたいな感じ、ありません?」

成田「すごいわかる」

「そうですよね。だから、変わっていようって常に気を引き締めてます。それに私、日常生活でも仕事でも、停滞が苦手で、不安になるんです。新しい髪型にするとか、新しい服にするとか、小さいことでもいいので、変化を近くに置いておきたくて。単純に、周りにある物を変えることもけっこうします」

成田「変わらないでいるのって、相当、自分に自信がないと無理だと思っていて。それに、変わっていかないといけないと思うし、素晴らしい人間と出会ったりしたら、良い意味で変わっていってしまうので」

――人との出会いで自分が変わることは、ポジティブに受け止めているんですね。

成田「もちろんそうです。良い人間だと思った人から影響を受けて、変わっていきますね」

「でも、変わろうと思っても変われない部分もありますよね。直したいって思ってるところって、意外と直らなかったりして。あ、また同じことやってる、みたいな(笑)」

成田「そういうことだよね(笑)」

深く変えず飛び込めば、変化できる。人生を変えていかないと、出会うべき人とは出会えない(成田)

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――今まで、人生の岐路で、自分を思い切って変えてチャレンジしたり、困難を乗り切った経験はありますか?

「20歳で初舞台をやったことです。私は10歳から仕事をしてきて、それまで映像しか挑戦してこなかったんですけど、舞台に挑戦したのは自分にとってすごく大きい変化でした。振り返ると、そのときの変化は今の自分にとってすごく良かったと思っているんです。今、こういう作品にも出会えているし、また映像作品で仕事をするときも、新しいところで受けた風で自分が変わったことがわかるし。知らないことだらけでしたし、今までのキャリアをいったん横に置いて新しいことを始めるのは、大きなチャレンジでした。自分にとって、すごく大きな分岐点だったなと思ってます」

成田「僕は、美容学校に行っていたんですけど、その道を進まずにこの世界に入ったことかな。今まで変えようと思って変えたことはあまりなくて。自分はわりと、過去とか、いろんなものを捨てて、次の道に進める方なんですよ。すっとやめる、っていうことができて。それは責任も伴うんですけど、ある程度、軽い気持ちで生きていかないと、何も変えられないなと思うんです。だから、深く考えずに、変えながら生きてます。すごい作品に飛び込んじゃったけど、やるしかないので、やる。そういうふうに、さらっと始めて、真摯に向き合うことの繰り返しかな。まだまだ発展途上すぎるので、そうやって変わっていかないと、いろいろなことができないなと思いますね」

――しなやかに変化して道を選んでこられたんですね。人ってどうしても、今までやってきたことや過去にこだわりすぎてしまうと思うんですけど、そうはしない強さを持っているんですね。

成田「でも、今までやってきたことは、ムダにはなりませんからね。美容学校に行ってたこともそうだし、僕はこの仕事を始めたのが21で、同年代に比べると遅かったかもしれないけど、21歳まで別の場所での人生を経て今の仕事を始められたことは、よかったなと今は思ってます。10歳から始めた人も、僕のように21歳から始めた人も、いろいろな人がいて。でもこうして同じ作品で、一緒に戦っていて……出会いですよね。人生を変えていかないと、出会うべき人には出会えないと思います」

自分がやりたいことを思い出すと、またゼロから始められる。それで気持ちのバランスをとっています(葵)

――今後、自分のここを変えたいとか、こういう変化にチャレンジしたいなって思うことはありますか。

「社交的になりたい(笑)。私、すごい人見知りなんです。今日の別の取材のときに邦生さんが、『成田くんはマインドがオープンだ』って話していて、本当にそうだと思って。私、逆に全然オープンじゃないから、成田さんみたいにオープンになりたいって、さっき思いました(笑)。なんとなく自分を中心とした円を作って、壁を作っているような気がするんです。なかなか変えられないんですけど、少しずつでもオープンになっていって、もっといろいろな人とコミュニケーションを取りたいです」

――成田さんはどうですか?

成田「なんだろう……日中に、眠くならないようにしたい(笑)。あとはソファーで寝ない。昨日、数日ぶりにちゃんとベッドで寝たら、朝、スパーッと起きて。最高!ってなって」

「(笑)寝る場所って大事ですよね」

成田「1日のパフォーマンスが変わってきますからね。だからちゃんとベッドで寝るようにしたいです(笑)」

――最後に、おふたりが輝くための秘訣を教えてください。

「それ、私が聞きたいぐらいです(笑)。でも、好きなことをやることかな。お芝居が好きだし、休みの日も好きなことをするようにしてます。街を散歩したり、ご飯を食べに行ったり。忙しいときって、やらなきゃいけないことに追われて、やりたいことを忘れていっちゃうと思うんですけど、最近はひとつひとつ、『あのとき、あれがやりたいと思ったんだよな』とか、『あの人にこれを言いたかったんだった』とか、頻度高く思い出すようにしてます。お芝居は楽しいけど、お芝居をやってると、自分の気持ちは一回、置いとかないといけないから。毎日、自分がやりたいことを思い出すと、またゼロから始められるんです。私はそれで気持ちのバランスをとっています」

成田「自分は最近、自分を許しながら生きています。あれしなきゃ、これしなきゃって思うことが多いけど、『いいよ、面倒くさいんでしょ? もうやらなくて大丈夫』って思いながら。つらくなったら、もう今日はやらないっていうことにするのもいいかなって。深呼吸して、もういいよって思うようにしてます。そうすると体が動くし、楽になります」

――上手に逃げているんですね。逃げるのが必要だなって思ったきっかけはあったんですか?

成田「ここ1年ぐらいの流れもそうだし、この舞台をやる前に出会ったボイストレーニングの先生から教えてもらったことも大きいですね。先生のボイストレーニングって、まず『出す』んです。とりあえず呼吸しましょうっていうところからレッスンが始まるんですね。その先生からも『許しながらでいいんじゃない?』って言ってもらえて。『ああ、疲れた』って声に出して、大きく息を出したところから、本当に始めることができるんです。最近は、それを特に意識していますね」

 

■PROFILE■

成田凌
1993年11月22日生まれ、埼玉県出身。フジテレビオリジナル連続ドラマ『FLASHBACK』に主演し俳優デビュー。2018年、映画『スマホを落としただけなのに』『ビブリア古書堂の事件手帖』で、第42回日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞。2021年『窮鼠はチーズの夢を見る』で第44回日本アカデミー賞 優秀助演男優賞を受賞するなど、その演技力は高く評価されている。近年の主な出演作は、【映画】『ちょっと思い出しただけ』(2022)、『竜とそばかすの姫』(声の出演)『くれなずめ』『街の上で』『ホムンクルス』『まともじゃないのは君も一緒』(2021)、【ドラマ】『逃亡医 F』(NTV・2022)、『おちょやん』(NHK・2020)、『アリバイ崩し承ります』(EX・2020)など。待機作に『コンビニエンス・ストーリー』(8月5日公開予定)、舞台『宝飾時計』(2023年1月上演予定)などがある。

葵わかな
1998年6月30日生まれ、神奈川県出身。2009年に女優デビュー。2017年、連続テレビ小説『わろてんか』(NHK)で、ヒロイン・藤岡てん役を熱演し一躍注目を集める。2019年にはミュージカル『ロミオ&ジュリエット』でジュリエット役に抜擢され初舞台・初ミュージカルに挑み、舞台にも活躍の場を広げた。同年には映画『ミッドナイト・バス』『ラーメン食いてぇ』『青夏 きみに恋した30日』、ドラマ『ブラックペアン』への出演で、第43回エランドール賞新人賞を受賞。近年の主な出演作は、【舞台】『冬のライオン』(2022)、『The PROM』(2021)、『アナスタシア』(2020)、【映画】『キャッツ』日本語吹替(2020)、『任侠学園』(2019)、【ドラマ】『女の戦争~バチェラー殺人事件~』(TX・2021)、『インフルエンス』(WOWOW・2021)、『教場』シリーズ(CX・2021、2020)、『年の差婚』(MBS・2020〜2021)など。

 

■INFOMATION■

 

COCOON PRODUCTION 2022

NINAGAWA MEMORIAL

『パンドラの鐘』

作:野田秀樹
演出:杉原邦生
出演:成田 凌 葵わかな / 前田敦子 玉置玲央 大鶴佐助 / 柄本時生 片岡亀蔵 南 果歩 白石加代子 ほか

<東京公演>2022年6月6日(月)~6月28日(火)Bunkamuraシアターコクーン
<大阪公演>2022年7月2日(土)~7月5日(火)森ノ宮ピロティホール

 

Photos Ken Ogawa / Styling Shogo ito@sitor(成田凌),Junko Okamoto(葵わかな) / Hair&Make-up Ai Miyamoto@yosine.(成田凌),Ayumi Takeshita(葵わかな) / Words Miki Kawabe / Edit Kaori Watabe

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