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2022.04.17

美弥るりか×花乃まりあ×剣幸interview 宝塚出身の3人がMusical『The Parlor』で描く“世代を超えた繋がり”

 

2022年4月29日(金・祝)より、よみうり大手町ホールにて上演されるMusical『The Parlor』。世代を越えて受け継がれる部屋「ザ・パーラー」を舞台に、その場所を守り継ぐ母娘三世代の物語だ。作・演出は、数々の海外ミュージカルの演出を手掛け、演劇界で確かな評価を得ている小林香。ジェンダーギャップ指数120位と発表された日本で、小林自らが今一番伝えたいものとして温めてきた「女性たちの物語」を描く。主演の美弥るりかが演じるのは、パーラーの娘であり、孤高の人気ゲームクリエイター・円山朱里。そして朱里の母・円山千里と、朱里の妹・草笛灯の2役を花乃まりあが演じる。さらに、朱里の祖母で、パーラーを守り続ける円山阿弥莉役には剣幸。時期は違いながらも、宝塚歌劇団を牽引してきた3人が顔を揃える。そんな彼女たちに、作品についてはもちろん、同郷ならではの世代を超えた繋がりや、人生のターニングポイントや変化についても話を聞いた。

 

剣さんと同じ板に立つ日が来るなんて、今でも信じられない。3人で親子3世代のように過ごしている日々が幸せ(美弥)

衣装協力/Wild Lily

――今回、演出家の小林香さんによる完全新作のオリジナルミュージカルということで、出演が決まった時の感想から聞かせてください。

花乃「香さんと一度お仕事させていただいた時に、学びの多い時間を過ごさせていただいたんです。ぜひまたご一緒したいなと思っていたので、長年温めてこられたテーマを描いた今回の作品に出させていただけるのは嬉しいです。そして、素晴らしい先輩方とご一緒できるとわかった時はすごく緊張しました! でも、お稽古が始まって間もないとは思えないくらい、リラックスしながら家族の役を演じさせていただけているので、毎日ウキウキしています」

美弥「さまざまな常識が変わりながらも少しずつ踏み出している今、新作を上演されたいという話を伺って、しかも香さんがずっと描きたかった物語ということで、とても嬉しかったです。自分自身のことにもリンクしそうですし、誰もが持っている心の葛藤やいろいろな感情が交差するストーリーで、私自身もすごくいい経験になるだろうなと感じています。そして、私は剣さんが月組トップスター時代からの大ファンなのですが、剣さんと同じ板に立つ日が来るなんて!って今でも信じられないです。花乃ちゃんとも在団中はご縁がなかったので、お芝居とはいえ、3人で過ごす親子3世代みたいな日々がすごく幸せです!」

「私は何度か香さんの作品には出演させていただいていて、人々の傷が再生していく、香さんの作る温かい物語が大好きです。だから、どんな役でも香さんの作品なら出させていただきたいと思っています。こうしてまた出演できることが本当に幸せですし、可愛らしいみなさんと一緒に家族を演じられるのが楽しいです」

――みなさんがご自身の役を演じる上で、意識したい点はどこですか?

美弥「私が演じる円山朱里は、小さい頃に母・千里さんが亡くなってしまったことの悲しみから、家族や人と関わることを避けていた人物なのですが、移住していたアメリカからパーラーに帰ってきたことで、どうしても人と関わることになるんです。今まで自分が目を背けていた問題点と向き合い、彼女の中で起こる人生の変化をしっかり演じていきたいなと思っています。ただ、私は今まで個性的な役をいただくことが多く、あまりナチュラルな役をしたことがないんですよ。『普通に』って香さんに言っていただくんですけど『普通って何だ!?』みたいな(笑)。カチカチのロボットみたいな状態でお稽古しているので、きっとまだ力が入っているんだと思います。みなさんのお芝居から学びながら、もっとリラックスした状態で朱里を演じられるようになりたいです」

花乃「私は千里さんと、千里さんの娘であり朱里さんの異父姉妹でもある灯さんの二役を演じさせていただくんですけど、お客様が見た時にちゃんと理解してくださるように、演じ分けるのをまずは頑張らなきゃいけないと思っています。同時に、千里さんと灯さんにも受け継がれていて、さらに阿弥莉さんと朱里さんにも繋がっているという、みんなを繋ぐ根っこの部分を大切に作っていけたらいいなと思っています」

「私が演じる阿弥莉が談話室だったパーラーを美容室にしたのは、自分のカットでその人の人生を少しでも変えて幸せにしてあげたい。そして、それが生きがいだったからだと思います。でも、娘である千里が死んでしまい、そこから自分の中の時が止まり……残された幼い孫の朱里を育てるためだけだけの人生になってしまった。夢も希望も忘れ、いつの間にか歳を取ってしまう。そろそろパーラーを閉めようかという時に、アメリカへ行ってしまった孫が帰ってきて、そしてもうひとりの孫も突然現れる。そこからもう一度それぞれの歯車が動き出します。その歯車が噛み合った時のパワーを意識できたらと思っています」

みんな代々繋がっているのが宝塚のいいところ。培ったものは消えないし、一緒に過ごしていなくても、同じ香りがする(剣)

衣装協力/CUCINA

――本作品は女性たちが守り受け継いできたものがテーマということで、みなさんのご出身である宝塚歌劇団も、まさに女性たちが伝統を受け継いでいるカンパニーかと思います。同じカンパニーにいたからこそ自然にできたことや、阿吽の呼吸を感じるようなことはありましたか?

花乃「お二人がフランクに話してくださったり、お芝居でもとても自然に受け入れてくださったりするのは、私が後輩だからこそなのかなって思います。お稽古場でも、宝塚時代に上級生の方や男役さんを見てうっとりしていた気持ちが蘇ってきますし、そういうところは退団しても変わらないんだなって思いました。お稽古が始まる前に取材でご一緒した時も、男役さんと撮影したのがすごく久しぶりだったのですが、お二人ともさらっと気遣ってくださるし、距離の取り方もすごくスマートで、『やっぱり男役さんってかっこいい!』って思っちゃって。そうやってキャッキャできるのは娘役の特権なので、退団しても男役さんに楽しませていただいているなって感じます」

美弥「みんなが言葉にせずともあの場所を大切に思っているんでしょうね。語らなくても胸の中に同じ温かさがあるから、言葉にしなくても、お互い察するものがあるんだと思います」

「宝塚のような上級生から下級生への教えが受け継がれている場所って、世界中のどこにもないと思います。我々は一番多感な青春時代に、家族よりも長い時間を宝塚で過ごしているんです。厳しくて大変だけど、同期生同士で助け合ったり上級生から多くのことを教わったりして、本当の家族のように何年も一緒にいる。しかも男役というのは宝塚ならではのもの、受け継いでいくことが伝統なのです。私も憧れていた上級生の方々にとてもお世話になりました。同じように伝えることができたかどうかはわかりませんが……みんな代々繋がっているのが、宝塚のいいところ。辞めてもそこで培ってきたものは消えない。同時期に過ごしていなくても家族的な感覚があると思います。お稽古場で香さんが『三人並んでたら家族みたいね』って言ってくださった時はすごく嬉しかったです」

――私もだんだんみなさんが家族に見えてきました。みなさんにとってパーラーのような場所が宝塚なんですね。

花乃「そう言っていただけると嬉しいです」

美弥「本当にその通りですね!」

宝塚を辞めたばかりの頃はすごく怖かった。でも、退団や結婚という変化を経て、人間的な強さを身につけられた(花乃)

衣装協力/Wild Lily

――みなさんの中で大きな変化のあった、人生のターニングポイントを教えてください。

花乃「私は宝塚時代に相手役だった、明日海りおさんに出会ったことだと思います。これはきっと全ての娘役がそうだと思いますが、人生において一番熱い時間を一緒に過ごしてくださった相手役の方って本当に大きい存在だなって。いつもお墓に明日海さんの名前を刻みたいって言うと『やだー!』って嫌がられるんですけど(笑)。でも、そのくらい自分の人生になくてはならない出会いだったと思いますし、そこから自分の人生が大きく変わったと思うので、間違いなくターニングポイントです。重いかもしれませんが、『あの子が相手役で恥ずかしくなかったわ』って言っていただけるように、一生かけて、自分の人生をもって恩返ししたいなって思っています」

美弥「ターニングポイントは何回かあるんですけど、一番最近だと、コロナ禍になった2020年2月くらいですね。あの時に、準備していた舞台が直前で中止になって、その後自分が出る予定だったものも全部なくなったんです。宝塚にいる時からありがたいことに次の作品があって、役があってっていう繰り返しだったんですけど、それがなくなった時に、世の中や人のために私は何ができるのかなってすごく考え直しました。人に会えない分、自分の心とたくさん会話して、今まで宝塚に捧げてしまった時間を今度は自分に使ってあげよう、愛情をもって自分に向き合おうって考えられたのがすごく大きいです」

「私もいろいろあるけど、一番大きかったのはやっぱり宝塚に入れていただけたこと。もともとインテリアデザイナーになりたくて工業高校で製図を描いていたんですけど、自分のやりたいこととちょっと違ったんです。それで何がしたいのか考えた時、歌って踊れたら……(笑)。何も習ってなかったので半年だけバレエを習い、声楽も二十日間ぐらい習って飛び込んだんです。受かるはずないと思っていたけど、青天の霹靂で、今ここにいるわけです(笑)。みなさんと一緒に舞台に楽しく立っていられるのは、やっぱり宝塚に入れていただけたおかげ。舞台に出る幸せや、お客様が喜んでくださる嬉しさを肌で感じられる。私にとってはそれが一番の大事件です」

――みなさんが時代の変化を感じることや、最近ご自身の中で感じた変化などはありますか?

美弥「私は最近、食への向き合い方に対する変化を一番感じますね。今までは明日の舞台のためにお肉を食べようとか、生きるための一つのアイテムとしてしか向き合ったことがなく、食べることの楽しさがわからなかったんですよ。料理もしたことがなかったので、初めて炊飯器を使ってみた時にちゃんと炊けなくて」

「それは事件だよ!(笑)」

美弥「本当に恥ずかしいです(笑)。でもコロナ禍になって、外食ができなくなったり、去年ちょっと体調を崩したこともあって、もう今の生活ではいけないって自炊をするようにしたんです。そしたらすっごく楽しくて。料理の楽しさはもちろん、体の変化や心が軽くなっていくのも感じました。やっぱり食事と体と心、睡眠とかも含め、全てが循環して繋がってるんだなって今更気づきましたね」

花乃「私は宝塚を退団して5年経つんですけど、辞めたことを実感したのは退団3年目ぐらいだったんです。自分は辞めたけど、相手役の明日海さんがまだ宝塚に在籍していらしたのもあって、あんまり実感がなくて。明日海さんが女優さんになられた姿を見て、やっと私辞めたんだって実感しました。そして昨年の結婚を機に、ようやく世の中に出たことが怖くなくなりました。宝塚を辞めたばかりの頃って、もっといろんなことから解放されるかと思いきや、すごく怖かったんです。というのも、今までは宝塚っていう自分を証明する場所があったり、相手役さんや上級生の方という指導してくださる方がそばにいた。それがなくなったことで怖くなっちゃって。でも退団を実感したことや、結婚して『家族を守らなきゃ』っていう思いが芽生えたことで、臆病な気持ちがあんまりなくなりました。いろんなお仕事に対して意欲的な気持ちになれたので、人間的な強さを身につけられたような気がしています」

「コロナ禍を経て、人と会うことが大事だと誰もが思うようになりましたね。でも、やっていることは何も変わっていないんです。ただ、もうすぐ70代になるなかで、『私はいつまで仕事できるか?』、台本に書いてあったみたいに『あと何度桜見られるかしら?』なんてことを、だんだん考えるようになって。でもその変化を受け入れつつ、体調の変化も楽しみつつ、自然にまかせて生きていけたらいいなあと思っています」

――最後に、本作の注目ポイントとファンの方へメッセージをお願いします。

美弥「大事件が起きるわけではありませんが、大事件じゃないからこそ、みなさんの生活の中に散りばめられている感情がいろんなところにぽつりぽつりと現れてくる作品ではないでしょうか。じんわりと心に染み込んでいくような温かいミュージカルにしていきたいなと思いますので、まだまだコロナなど油断できない時期ではありますが、みんなで作り上げる作品を一人でも多くの方に見ていただけたらなと思います」

花乃「家族の繋がりを演じるのは私自身初めての経験ですし、宝塚の先輩方とこんな関係性を演じることも二度とないだろうなと思っているので、そこにも注目していただきたいです。香さんがずっと大切に考えていらっしゃったテーマを、熱く重苦しく投げかけるというよりも、何かちょっと考えるきっかけを作れたらと思います。楽しんでいただけたら嬉しいです!」

「ゲームの世界が出てくるんですけど、人生もゲームのようにどっちを取ろうという選択で進んでいくんですよね。その選択は絶対に自分で決められるもの。選択をしながら女性が前向きに、明るく元気になる、そして絆はつながっていく。見た後にみなさんに力強さを感じていただけたら嬉しいです」

 

■PROFILE■

美弥るりか

9月12日生まれ。2003年に宝塚歌劇団に入団(89期)。男役として星組に配属後、2012年に月組へ組替えをし、2014年『THE KINGDOM』でダブル主演。2017年『瑠璃色の刻』・2019年『アンナ・カレーニナ』で主演を務め、2019年6月退団。唯一無二の存在感で、男役だけでなく幅広い役柄を好演。宝塚歌劇団退団後、舞浜アンフィシアターでの「ソロライブ」から活動をスタート。独自の個性を生かし、舞台だけでなくファッション・ビューティーなど様々なフィールドで活動の幅を広げている。

 

花乃まりあ

1992年10月12日生まれ、東京都出身。2010年、宝塚歌劇団に96期生として入団。月組公演「THE SCARLET PIMPERNEL」で初舞台。その後、宙組に配属。「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」(12)で、新人公演初でヒロインに抜擢。翌年には、バウホール公演でも初ヒロインを務め、同年、「風と共に去りぬ」で、新人公演ヒロイン、大役スカーレット・オハラを演じる。2014年、花組へ組替え後、「エリザベート」で、4度目の新人公演ヒロイン、エトワールを務める。同年、11月17日付で、花組トップ娘役就任後 「Ernest in Love」(東京国際フォーラム公演)で、プレトップお披露目。第2回台湾公演「ベルサイユのばら/宝塚幻想曲」で大役マリー・アントワネットを務めた。2016年度には阪急すみれ会パンジー賞、娘役賞を受賞。2017年2月5日、「雪華抄/金色の砂漠」東京公演千秋楽をもって、宝塚歌劇団を退団。退団後は舞台、ドラマ等で活躍。また、NTV「ZIP!」ではリポーターを務める。

 

剣幸

3月2日生まれ、富山県出身。県立富山工業高校から宝塚音楽学校へ入学するという珍しい経歴を持つ。1974年宝塚歌劇団入団。「虞美人」で初舞台。1985年から5年間、月組の男役トップスターとして数々の名作を残す。なかでも「ミー&マイガール」は1年間の続演という、宝塚史上初の記録を樹立した。また在団中にいずみたく氏にその歌唱力を認められ、氏のプロデュースで3枚のアルバムをリリースしている。日本もの、翻訳もの問わず、演技力、歌、踊りとそれぞれに高い実力を評価されたトップスターであった。1990年退団。1993年、アガサ・クリスティー劇場「蜘蛛の巣」の主演で、第18回菊田一夫演劇賞受賞。2010年、「この森で、天使はバスを降りた」「兄おとうと」の演技で第17回読売演劇大賞優秀女優賞受賞。2014年、「ハロー・ドーリー!」の演技で、第21回読売演劇大賞優秀女優賞受賞。「ミュージカル」誌が選ぶ2013年度年間女優ベスト1となる。2016年、「宝塚歌劇の殿堂」顕彰者に選出される。

 

■INFOMATION■

Musical『The Parlor』

作・演出:小林香

作曲・編曲:アレクサンダー・セージ・オーエン

出演:美弥るりか 花乃まりあ 植原卓也 舘形比呂一 北川理恵 坂元健児 剣幸

<東京公演>2022年4月29日(金・祝)~5月8日(日)よみうり大手町ホール

<兵庫公演>2022年5月14日(土)、15日(日)富兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

 

Photos Takaki Kusumoto@willcreative / Styling Shingo Tsuno / Hair&Make-up Tomonori Maruyama(美弥るりか),miura@JOUER INTERNATIONAL(花乃まりあ・剣幸) / Interview Nao Hasegawa / Words Madoka Uchiyama / Edit Kaori Watabe

 

美弥るりかさんインタビュー

元男役から職業・美弥るりかとして生きること【ModernSlashers #02】

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