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2022.11.10

中村倫也interview 主演ミュージカル『ルードヴィヒ〜Beethoven The Piano〜』への想いと表現へ向かう原動力

連続ドラマ、映画、配信作品と、幅広く活躍する中村倫也の主戦場のひとつが、演劇だ。全身から解き放つ熱量と表現力で観客の心を揺らしてきた中村は今年、ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~』で、青年期のベートーベンを演じる。稽古中の中村に、7年ぶりとなる演出家・河原雅彦とのタッグや、自身を支えてきたという演劇への思い、そして、第一線で輝き続けられる理由を聞いた。

仕事がなくて鬱屈していた若手時代に、演劇が自分の生きる支えになった。

――『八犬伝』や『ライチ☆光クラブ』などでタッグを組んできた演出家の河原雅彦さんの「本格ミュージカルをやりたい」という思いを受け取る形で、ベートーベンの青年期のルードヴィヒを演じるお気持ちはいかがですか?

「河原さんが僕を指名してくれたのが嬉しかったです。河原さんが『真心一座』に呼んでくれて、それを観た演劇界のいろんな人が声をかけてくれて、その作品を観た誰かがまた面白がってくれて……仕事がなくて鬱屈していた若手時代に、演劇が自分の生きる支えになりました。河原さんは間違いなくその道を開いてくれた人なので、その方が新しいチャレンジをするときに一緒にやろうぜと言ってくれるのなら、しんどそうだなと思いながらも(笑)、やるっきゃねえなという感覚でした。河原さんとは昔から、演劇をやる上で『威力』という言葉をよく使っているけど、さっき一緒に、今回の作品は支配力が大切だという話をしていて。今回の役はそういうものが自分に求められると思っています」

――支配力というのは具体的にいうと、どのような力なのでしょうか?

「劇場という空間のひとつひとつの粒子までがその演者の色に染まるような、一瞬でその場を支配するようなイメージです。僕は今まで、自分が板の上にいるときも観る側としても、演劇にそういうものを感じてきて、それが支配力という言葉に置き換わっているのかなと思います。舞台上に芯の通った熱量を放出している物体がいたら衝撃を受けるし、惹きつけられると思うんです。ルードヴィヒは、そういう3000℃ぐらいの熱を持つ物体として、瞬間的に存在する必要がある役ですね」

舞台はホームとか育った場所とも言えるかもしれない。結局のところ、好きな場所。

――稽古に入る前に抱いていた、この作品の印象を教えてください。

「韓国のオリジナル版の映像を観て、俳優の方々にすごいなと思いました。ミュージカルは歌が大変か、芝居が大変か……だいたいこのどちらかだと思うんです。でもこの作品は、両方ともトップクラスにしんどくて。『しんどい』っていうのはネガティブな意味ではなくて、表現者として熱量を放出しないといけないということ。僕自身も、誰かが演じていることを忘れさせるぐらい物語に巻き込めるような作品作りをしなきゃいけないなと思いました」

――日本語に訳された歌の歌詞を読んだときの感想はいかがでしたか?

「ミュージカルのナンバーの歌詞はひとりごとか叫びか会話で、今回は会話があまりないんです。それぞれががそれぞれの思いを主張していて、誰かと歌う曲でも思いがすれ違っていたりして。慟哭や葛藤を表現する歌が多く、そういう歌はすごくテクニックが要るんです。調子が一辺倒になると、それが表現できない。だからその部分も意識して稽古しています」

――今回はミュージカル作品ですが、中村さんにとって音楽とはいうのはどういうものですか?

「中村といえば、音楽ですからね(笑)。運転とか家事をしているときは、音楽とかラジオとか、何らかの音は流してます。小学校時代も、お小遣いをもらうとCDを買う子だったんです。学生時代もみんなと同じように音楽を聴いてきたましたけど、大人になってから、周りの人がけっこう歌詞をうろ覚えなんだなと思うことがよくあって。だから自分は小さい頃から、詞の世界や、歌の物語に触れていた子だったんだと後から気づきました。今はわりと懐メロを聞くことが多くて、最近は井上陽水さんがブームです。車に乗って、1曲目で“傘がない”をかけたりしてます(笑)」

――映像作品でも活躍されている中村さんにとって、舞台とはどのような場なのでしょうか。

「ホームとか育った場所とも言えるかもしれないですけど、結局のところ、好きな場所なんだと思います。それに、前から自分の役者としての特性を考えると、舞台が一番合っていると思っていて。映像作品で寂しいなと思うのは、観終わった人の顔を見られないこと。舞台は、ひとりの人の人生や半生を一方通行でしっかり描くことができるし、ものづくりのための稽古期間があり、本番を迎えて、観た人がどんな感想を抱くのか、どんな拍手をしてくれるのかを目の当たりにできる。勤務時間的にも健全ですし(笑)。ものづくりとしても人としても、舞台は健全な気がします。でも、そのぶん……映像はアングルや照明、音の演出がありますけど、舞台はそういうものがない一枚絵なので、すべてがバレます。立ち姿ひとつとっても、細部に至るまでお客さんが観て想像力を働かせるので、しっかりと役としてそこに立っていないといけない。舞台にはそういう怖さもありますね」

正直に言うと、いろんなことに関して「知ったこっちゃない」で生きている(笑)

――ベートーベンのような誰もが顔を知っている歴史上の人物を演じる面白さや難しさは、どんなところに感じていますか?

「ベートーベンは、顔もその生涯も、残した作品もみんな知っているけど、そういうことはあまり気にしていないです。だって、会ったこともないですし、過去の偉人はだいたいデフォルメされて後世に伝わるものだから、史実が正しいかもわからない。だって、若い頃のベートーベンの顔を調べたら、俺より浅利陽介のほうが似てましたし(笑)。僕がやるベートーベンは、僕がやるベートーベンでしかないと思っています。だって、舞台であの肖像画の髪型の僕が出てきたら、引くでしょ(笑)? そこは合わせなくてもよくない?と思いますよね。本人だってあの髪型は、絵を描かれるためにセットしただろうし(笑)。この作品におけるベートーベンの人物像は、稽古の中で見つけていきたいと思っています。だから、ベートーベンマニアから『違うだろ!』って怒られたら、『ごめんなさい』って言うしかないですね(笑)。マンガの実写版をやるときもそうですけど、元のキャラクターのことはあまり気にしないです。そんなことより、ここに集まった面子でいいものを作ろうって感覚です。正直言うと僕、いろんなことに関して『知ったこっちゃない』で生きてます(笑)。『エゴサしないんですか?』って聞かれることもあるんですけど、調べたところで知ったこっちゃねえし、みたいなマインドですね」

――本作でベートーベンの若き日の苦悩を表現されますが、中村さん自身が表現者として、彼の抱える葛藤や若き日の鬱屈した気持ちと共感するところはありますか?

「彼のように小さい頃から音楽漬けで、あるときを境に耳が不調になり、最終的には聞こえなくなって……という人生に置き換わる経験を僕はしたことがないですし、彼のような圧倒的な才能を持つ人物でもないので、そう考えると、イコールで噛み合うものは僕の中にはないです。ただ、稽古の初日に初めてセリフを声に出したら、ちゃんとしんどいなっていう感じがあって、自分の中の何かと結びついたんだなって実感したんです。ささやかかもしれないですけど、絶望という種類の経験でいうと、僕もそうですし、誰しもが何らかの挫折なりを経験して生きていると思うので。そういうものを拡大していくことで近い熱量になるんじゃないかということを感じて、稽古をしています。自分の人生経験の中にあるものを一生懸命拡げて、結びつける作業をしていますね」

――本作ではベートーベンはどう描かれていて、それを演じる上では何を一番大切にしていますか?

「彼は小さい頃から父親から厳しい音楽教育を受けて、才能もあり、常人とは共有できない感覚や、見えているもの、聞こえている音、いろいろなものがある中で、普通の人ではないというということは、大事な要素としてあると思います。そういう圧倒的な何かという角度からベートーベンを描いている作品ですね。それを演じることはすごく疲弊しますけど、自分が観る側でも、役者が出し切っていない舞台は面白いと感じないので。それに自分が関わる上では、受け手として感じた魅力や引きつけられるものより、もっと呈出しないと気が済まないんです。毎回、演劇だろうという演劇じゃなかろうと、どんな作品でもそれを探す旅をしますね」

――今回は、子役との共演もありますし、7年ぶりの河原さんとのタッグですが、稽古場の雰囲気はいかがですか?

「最初に子どもの歌から始まるんですけど、もう、かわいくてね。ずっと見ていたくて、自分の出番がまだ来てほしくないと思うぐらい清らかな気持ちになります。子役はダブルキャストで、ふたりのカラーも違うし、楽しく新鮮な気持ちで一緒にお芝居しています。河原さんは、同じ方向を目指している感覚は稽古初日からありました。同じところを面白がっているなとか、同じものを斜めから見て笑ってるな、とか。韓国版は、国のカラーもあって台詞に勢いがあるんですけど、稽古に入る前に河原さんと、日本版では、そこまでぶつけなくても伝わるものはあるんじゃないかという話をしていて。もう少し繊細な機微を大切にしようと言ってたんですけど、稽古に入ったら、やっぱりもっとぶつけてほしいと言われて(笑)。河原さん、変わらずだな、みたいな気持ちもありつつ稽古をしています」

膝下ぐらいまで土がついてるような気持ちで生きている。泥の中を歩いてきた足、というか。

――『GLITTER』にちなんだ質問ですが、映像作品に舞台に第一線で活躍し続けている中村さんが今、輝き続けるための秘訣や原動力は何ですか?

「がんばる原動力は、自分のためです。自分がここまで突き詰めたい、自分の仕事を豊かにしたい、自分の周りの人を笑顔にしたいという、あくまで自分が中心です。ここまで仕事をし続けてられている理由はというと、いろいろな方が仕事をくれるからです」

――第一線で輝き続けられる理由は、自分自身のためということ、仕事をオファーしてくれる人がいるからだと。

「そうですね。それに、たまたまというわけではないですけど、そういう時期なんじゃないですか。もうちょっとしたら、飽きられてくると思います(笑)。がんばっていたら今、そういう番が巡ってきた、みたいな感じだと思います」

――なるほど。今、輝く時期が来ているっていうことですね。

「ははは。すごく『輝く』っておっしゃいますけど、僕、自分が輝いてるとは思ってないんで。僕は、膝下ぐらいまで土がついてるような気持ちで生きてます。泥の中を歩いてきた足、というか。もしそこから上が輝いて見えるんだとしたら、それは照明さんの力ですよ(笑)」

――仕事のオファーが来るのも、人を惹きつけるお仕事をされているからだと思うんですけれども、それができている理由は何だと思いますか?

「楽しい仕事を好きな人としたいがために、人の期待や想定される結果を上回ることが、自分のエゴなんです。それをしていると誰かがまた面白がって、お話をくれる。その連鎖した結果が今なんだと思います。なんだか禅問答みたいになってきましたけど(笑)。自分が面白いと思うものを突き詰めて、こうすれば観る人に面白がってもらえるんじゃないか、驚くんじゃないかってニヤニヤしながら汗水たらして作ったものを、観た人がニヤニヤ面白がってくれる、そういう熱反応が起きているんだと思います」

身一つで何時でもどんな場所でもどんな環境でも誰の前でも、やるべきことをやれるのがプロ

――では日常の中で、がんばるために欠かせないアイテムや、必要なものはありますか?

「ないです。そういうものを作ってしまうと、それがないとがんばれなくなるのでいらないです」

――確かにそうですね。自分以外の何かに頼らないということですね。

「そうです。身一つで、何時でもどんな場所でもどんな環境でも誰の前でも、やるべきことをやれるのがプロだと思っているので。そこを目指して、若手時代から舞台をやってきましたね。だから、一時期流行ったモーニングルーティンを聞かれても、『何もありません』としか言えなくて。そういうところが、インタビュアー泣かせなんですけどね(笑)」

 

■PRESENT■

中村倫也さんの直筆サイン入りチェキを各1名様にプレゼントいたします!

※写真を選ぶことはできません。

【応募方法】

Instagramからご応募ください。

1.GLITTER公式アカウント:@glitter_magをフォロー

2.GLITTER公式アカウントの【中村倫也interview】の投稿に「いいね」

以上で応募完了!

 

【応募締切】

2022年12月11日(日)23:59

※ご当選者様にはDMでご連絡を致します。抽選時にフォローを外されている方は対象外となりますのでご了承ください。

 

■PROFILE■

中村倫也

1986年12月24日生まれ、東京都出身。2005年に俳優デビュー以来、数々のドラマ・映画・舞台に出演。近年の出演作として、ドラマ『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』(2022年)、映画『ハケンアニメ!』(2022年)など。現在、『仮面ライダー BLACK SUN』が配信中のほか、雑誌『ダ・ヴィンチ』にて「中村倫也のやんごとなき雑炊」連載中。待機作には舞台『ケンジトシ』(2023年2月〜)がある。

 

■INFORMATION■

ミュージカル『ルードヴィヒ〜Beethoven The Piano〜』

上演台本・演出:河原雅彦

訳詞:森雪之丞

出演:中村倫也、木下晴香、木暮真一郎、高畑遼大(Wキャスト)、大廣アンナ(Wキャスト)、福士誠治

<東京公演>2022年10月29日(土)~11月13日(日)東京芸術劇場 プレイハウス

<大阪公演>2022年11月16日(水)~21日(月)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

<石川公演>2022年11月25日(金)・26日(土)北國新聞赤羽ホール

<宮城公演>2022年11月29日(火)・30日(水)電力ホール

東京公演千穐楽及び、大千穐楽(仙台公演)にてライブ配信が決定!

【1】2022年11月13日(日)13:00回(東京公演 千穐楽公演)

【2】2022年11月30日(水)13:00回(大千穐楽公演)

※アーカイブ配信はございません。

 

Photos Ken Ogawa / Styling Akihito Tokura / Hair&Make-up Ryo Matsuda / Words Miki Kawabe / Edit Kaori Watabe

 

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