【正しいピルの飲み方をレクチャー】21日と28日タイプ別。マーベロンやトリキュラーも
避妊効果だけではなく、生理痛やPMS(月経前症候群)、ニキビ、月経不順、月経過多、子宮内膜症などの改善にも効果がある低用量ピル。実際にピルを飲んでみたいと思っていても「副作用や種類、飲み方など分からないことばかりで不安……」と感じている人は少なくないはず。今回は、丸の内の森レディースクリニックの院長である宋 美玄先生が、ピルの基本知識や低用量ピルの正しい飲み方をレクチャー。生理日を移動するときの飲み方や、アフターピルの飲み方も解説。
教えてくれたのは… 丸の内の森レディースクリニック 院長 宋 美玄先生
産婦人科医・医学博士。現役の産婦人科医として都内の病院に従事しながら、さまざまな女性の体の悩みやセックス、妊娠についての啓蒙活動を行なっている。著書は「女医が教える本当に気持ちのいいセックス(ブックマン社)」「女のカラダ、悩みの9割は眉唾(講談社)」など。(クリニック公式サイト)
【目次】
そもそも低用量ピルって?
「低用量ピルとは、女性ホルモンである黄体ホルモン(プロゲスチン)と卵胞ホルモン(エストロゲン)を合わせてできた錠剤のこと。ピルには高用量・中用量・低用量・超低用量という異なる種類がありますが、低用量ピルは避妊効果やPMS(月経前症候群)、ニキビ、生理痛、月経不順、月経過多、子宮内膜症の改善を目的に使うピルです。生理痛と子宮内膜症の治療では保険適用で処方されます。最近では、超低用量ピルというホルモンの配合量が少ないものもあります」
低用量ピルの種類とは?21錠と28錠の違い
21錠タイプと28錠タイプがある
「ピルは大きく分けて21錠タイプと28錠タイプがあります。違いは偽薬の有無だけなので、好みで選んでOKです。飲み忘れを防ぎたい人は、休みなく錠剤を飲み続ける28剤タイプの方が飲みやすいかもしれません。大きく分けると2つのタイプですが、中にはジェミーナやヤーズフレックスという、偽薬がなくて実薬が28日分入っている超低容量ピルもあります」
■21錠タイプ
全ての錠剤に女性ホルモンが入っているタイプ。21錠すべて飲み終わったら、7日間の休薬期間が必要で、その間に生理がくる。7日間空けたあとに次のシートを飲み始める。
■28錠タイプ
最初の21錠には女性ホルモンが入っていて、最後の7錠は偽薬のタイプ。最後の7錠を飲んでいる期間のどこかで生理がくる。偽薬つきなので、次のシートの飲み始めを忘れそうな人は28錠タイプが◎
代表的な低用量ピルの種類
低用量ピルは飲み方や効果は同じだけど、種類によって強みが異なる。「ピルによって何を改善したいか?」に注目して飲むピルを選ぼう。ここでは宋 美玄先生が患者さんに処方していて感じた各ピルの特徴を解説。試すピルを選ぶときの参考にして。
■マーベロン
「昔から存在していて、根強い人気のあるピルです。男性ホルモンの分泌をおさえる作用があるので、ニキビや多毛症の改善が期待できます。21錠タイプ・28錠タイプのどちらもあります。ただし保険適用外なので、値段は地域・クリニックによって異なります。過剰な皮脂、ホルモンバランスの乱れによるニキビや多毛症が気になる人は試す価値ありです」
■ルナベル(フリウェル)
「ルナベルのジェネリック薬品であるフリウェルは、低用量と超低用量があり、副作用が気になる人でも試しやすいピル。保険適用の場合は、1シート600〜700円ほどでお手頃価格で手に入れられるのが魅力です。21錠タイプのみ。休薬期間に生理がきますが、量が少なくなることがあります。お財布にやさしい値段でピルを飲みたい人や、生理の量を少なくしたい人は試してみるといいでしょう」
■ヤーズ ・ヤーズフレックス
「ヤーズは休薬期間が4日と、他のピルより期間が短いのが特徴のピル。ヤーズフレックスは休薬期間が3ヶ月に一度で、生理回数が減るのが魅力のピルです。ヤーズフレックスは人によって3ヶ月経たないうちに生理がくる可能性もあり、安定するまで生理日が読めないのがデメリットでもあります」
■トリキュラー
「女性ホルモンの配合が3段階で、ホルモンバランスが自然に変化するため、不正出血が起こりにくいのが特徴です。21錠タイプと28錠タイプがあります。不正出血をできるだけ抑えたい人は試してみてもいいかもしれません」
低用量ピルの正しい飲み方をレクチャー
初めて低用量ピルを飲むときは、どんな手順で飲み始めればいい? ここでは宋 美玄先生が、ピルの正しい飲み方を解説。
【STEP1】婦人科を受診する
まずは婦人科を受診する。主に医師と話すことは、ピルを飲む目的や持病、体調のことなど。ピルを飲む目的が生理痛の緩和や月経過多の改善である場合は、保険適用でピルを処方してもらえる。初めてピルを飲む場合は、1シートのみ処方してもらい、飲み終わりそうな頃に再び婦人科を受診して、次のシートに移るのが一般的。
【STEP2】生理1日目にピルを飲み始める
ピルを処方してもらったら、生理1日目から飲み始める。生理1日目〜5日目に飲み始めるのが一般的なピルの飲み方だけど、確実に排卵をストップさせるためには生理1日目にスタートする方が安心感あり。
【STEP3】毎日、規則正しく飲む
毎日飲み忘れることなく規則正しく飲み続ける。飲み方は21錠タイプと28錠タイプによって異なるので注意。
■21錠タイプの飲み方
21錠すべて飲み終わったら、7日間の休薬期間をとる。その後、次のシートを飲み始める。生理は休薬期間にくる。
■28錠タイプの飲み方
28錠すべて飲み終わったら、そのまま次のシートを飲み始める。生理は最後の7錠(偽薬)を飲んでいるときにくる。
【STEP4】症状が改善されたか、医師に相談
1シート飲み終わる頃に、再度婦人科を受診して、副作用の有無や血圧をチェックする。吐き気や不正出血、頭痛などの副作用がつらい場合は、ピルの種類を変えることも。問題なしと判断された場合は、同じ種類のピルを継続して飲み続ける。
【STEP5】年に一度は定期検診を行う
年に一度は、血液検査・超音波検査(エコー)・子宮がん検診を受けるのが基本。健康診断のときに一緒に検査すると効率的。その他には必要に応じて、血液凝固検査や眼底検査などを行うことがある。副作用が治らなかったり体のむくみが気になったりする場合は、すぐに婦人科を受診して、ピルを飲み続けてよいか相談しよう。
生理日を移動したいときのピルの飲み方
低用量ピル・超低用量ピルは、生理を移動することも可能。ここでは宋 美玄先生が、生理を遅らせたいときと早めたいときの一般的なピルの飲み方を解説。ただし人によっては副作用が出ることがあるので、かかりつけ医に相談してから生理日を移動するのがベター。
生理を遅らせる飲み方
「ピルを飲んでいる間は生理は来ません。21錠タイプの場合は、1シートすべてを飲んだあとに休薬期間を設けず次のシートに突入します。28錠タイプの場合は、最後の列の偽薬を飲まずに次のシートのピルを飲むことで生理を遅らせることができます。ただし遅らせることができるのは、長くても10日間ほどです。人によってはピルを飲み続けていても、生理が来てしまう人もいるので注意が必要です」
生理を早める飲み方
「生理1日目から2週間以上ピルを飲みます。その後、早めたい時期に合わせてピルの服用を止めると、少なめの生理がきます。1週間の休薬期間を設けたあとに、新しいシートでピルの服用を再開します。ピルは2週間以上飲む必要があるので、今ピルを飲んでいない人は、生理を避けたい日の1ヶ月ほど前から飲み始めなければなりません」
アフターピルの飲み方は?
「アフターピルは緊急避妊薬のことで、避妊に失敗してしまったときや避妊をせずに性行為を行ったときに飲む、『最後の避妊手段』といわれている薬です。黄体ホルモン(プロゲスチン)のみ配合されており、排卵を遅らせたり子宮内膜を変化させたりすることで避妊効果を発揮します」
【STEP1】婦人科を受診する
避妊に失敗したあとや避妊をせずに性行為をしたあとに、できるだけ早く婦人科を受診する。アフターピルは薬局での販売は行っておらず、病院でのみ処方してもらえる。
【STEP2】72時間以内にアフターピルを飲む
処方してもらったら、できるだけ早くアフターピルを飲む。避妊失敗後の72時間以内に内服することで効果を発揮すると言われており、早く飲めば飲むほど避妊率もアップする。
【Q&A】ピルの飲み方に関するギモンを解決
いつから避妊効果はある?飲み忘れたときはどうしたらいい?など、ピルの飲み方に関するギモンはたくさん。ここでは宋 美玄先生が、ピルに関する疑問にお答え。
Q:ピルを飲み始めて、いつから避妊効果がある?
「ピルを飲み始めた日から避妊効果があります。ただし14日以内にピルを飲み忘れてしまうと、避妊の効果は下がってしまうので注意してください。毎日飲み忘れなくピルを飲めるか不安な人は、ピルを飲み始めて14日後から避妊効果があると考えた方がいいでしょう」
Q:低用量ピルとアフターピルの値段はどれくらい?
「低用量ピルは保険適用の場合は約600〜3,000円、保険適用外の場合は約2,000〜3,000円。アフターピルは約10,000〜20,000円です」
Q:ピルの副作用はある?
「副作用は吐き気や不正出血、頭痛、胸の張り、むくみが挙げられます。ほとんどの副作用は4〜5日あれば落ち着き、長くても2〜3ヶ月で症状がなくなります」
Q:飲み忘れたときの対処法は?
「飲み忘れてから24時間以内の場合は、気づいたときにすぐ飲み忘れたピルを飲んでください。飲み忘れてから24時間以上経った場合は、シートの列によって対処法が異なる場合があるため、かかりつけ医に相談しましょう」
Q:ピルを飲めない人もいる?
「下記に当てはまる人は、ピルを飲めない可能性が高いです。ただし飲めない場合でも、他のホルモン剤を用いた治療を行えますので、まずは医師に相談してください」
・35歳以上の喫煙者
・血栓症の疑い、リスクがある人
・乳がんや子宮がんの疑い、リスクがある人
・高血圧の人
Edit&Text by Seimu Kawahara