原案は、長きにわたって世界中で支持される名探偵小説『シャーロック・ホームズ』シリーズ。ディーン・フジオカ演じる犯罪コンサルタント・誉獅子雄と岩田剛典演じる元精神科医・若宮潤一が名探偵バディとして活躍し、人気を博した月9ドラマ『シャーロック』の劇場版「バスカヴィル家の犬　シャーロック劇場版」が公開された。ホームズシリーズの中でも特に名作との呼び声も高い『パスカヴィル家の犬』をモチーフに、ドラマ版とはまた一味違った重厚なミステリー作品となっている。よくある凸凹コンビではなく、ふたりともが“知的でスマート”という獅子雄＆若宮による絶妙なバディ感も健在。メインキャストである岩田剛典に作品への想いや役者業について、そして、発売中の最新号『GLITTER vol.4』の特集テーマである『Transformers！ NEW OLD/NEW ME!! 〜変化変容で新しい自分へ〜』に関連する質問まで訊いた。

ディーンさんはとても信頼のできるお兄ちゃん的な存在。現場での過ごし方を含め、すごく居心地が良い。

──『シャーロック』シリーズが映画化されるということを聞いた時はどう思いましたか？

「今の時代、続編を作れること自体が貴重ですし、ドラマの反響が大きくないと実現し得ないことだと思うので、“嬉しい”という気持ちに尽きますね」

──劇場版の脚本を読まれた感想は？

「ドラマと比べて、『シャーロック・ホームズ』シリーズの原作にあるサスペンス、ミステリー要素がより色濃く出ていると思いました。テイストも重厚感がありますので、ドラマとは別物として楽しんでいただける作品だと思っています。登場人物全員が怪しく感じられるようなストーリー展開が見どころだと思います」

──岩田さんが演じる元精神科医・若宮潤一という役の変化をどう捉えましたか？

「ドラマ版では、獅子雄の指示を受けて背中を追って着いていくみたいな構図でしたけれど、映画版では……僕は勝手に“リモートバディ”って言ってるんですけど（笑）、電話やテレビ電話の機能を使って獅子雄と連携を取りながらお互いの仕事を全うするような雰囲気があって、獅子雄と肩を並べつつあるのかなと。ドラマを観ていただけた方には、そういう成長をわかりやすく感じていただけるんじゃないかと思っています」

──そういった変化を踏まえて、役作りで意識したことはありますか？

「同じキャラクターではあるのでテレビシリーズから大きくは変えていないんですが、箸休めとしてのコミカルなキャラクターという役割を若宮は担っているので、そういうシーンでいかにクスッと笑ってもらえるかっていうことは、より意識しましたね。あからさまに狙いに行くと面白くなくなってしまうので、自然とほっこりしてもらえるようなゴールを目指しました」

──ドラマシリーズを経たからこそのディーン・フジオカさんとの関係性はいかがですか？　そもそもお二人をキャスティングした理由として、原作のシャーロック・ホームズとジョン・ワトソンがそれほど違う世界に住んでいないのではないかというところから、大きく違うタイプのコンビではなく、知的でスマートなところが共通するディーンさんと岩田さんのコンビにしたと、太田大プロデューサーは明かしていますが。

「ディーンさんはとても信頼のできるお兄ちゃん的な存在で、現場での過ごし方を含めて、すごく居心地の良い方。ただ、そうやって僕とディーンさんを並べていただけるのは、なんかおこがましいですけどね（笑）」

──（笑）改めて、若宮と岩田さんが通じる部分というとどういうところだと思いますか？

「ドジな部分ですかね（笑）。あと動物好きなところも似てるかもしれないです」

忙しいのはすごく幸せなこと。すべてが経験として自分に返ってきている。

──この「シャーロック」シリーズは役者・岩田剛典にとってどんな存在のシリーズだと捉えていますか？

「これまでテレビドラマシリーズから映画化もされるという作品のメインキャストに名を連ねたことはなかったので、とても大きなプロジェクトの中にいさせていただけることにとてもありがたみを感じています。願わくば、今回の映画がまた良い反響をいただけて、次のステージに繋がる話が出るといいなと思っています。それと、西谷（弘）監督との出会いにすごく刺激を感じました。役者にすごく寄り添ってくれるだけでなく、明確に自分が取りたい画や演出をお持ちの方なので、そういう監督とお仕事をできたことは自分のキャリアにとって大きなプラスになったと思います。もっともっと一緒にお仕事がしたいです」

──2011年にスタートされた役者業も間もなく丸11年になりますが、グループ活動と役者業、そして昨年からソロプロジェクトも始められました。3輪の活動を並行してやられることでどんな良いフィードバックがあると思いますか？

「それは5年後、10年後、初めて気づくことなのかもしれないですね。今は相変わらず必死に目の前のことをやっている感じです。自分が決めていることもありますが、ありがたいことに与えられて生かされている部分が多い環境だったりするんです。それによって忙しいのはすごく幸せなことですし、すべてが経験として自分に返ってきています。なんとなく、将来はこういう風になっていきたい。そのためにブランディングをしていきたいという気持ちもあるんですが、そういうことを具体的に考える暇もないぐらいの日々なので、もう開き直って、この日々の積み重ねが自分の成長に繋がると思ってがむしゃらにやっています」

今を一生懸命頑張ることで明日を繋いでいけると思っている。

──発売中の『GLITTER vol.4』の特集テーマは『Transformers！ NEW OLD/NEW ME!! 〜変化変容で新しい自分へ〜』なのですが、岩田さんは変化を好むタイプですか？

「そうですね。僕はもうスーパー飽き症です（笑）。じっとしていられないタイプで、休日も休日にしたくないというか、結局制作活動をしたり将来のために色々と動いちゃいます。忙しいと、休みがほしいなと思いながらも、ちょっと休んだらすぐに仕事がしたくなってしまう。気持ちの充電が完了したら、すぐに焦ってくるんですよね。自分のことをワーカホリックだと思っています。体力が続くうちは今のペースでやっていこうとは思っていて。でも、芸能界は長くいると環境も変わっていくと思うので、その時がきたら違うペースを考えようかなっていう感じかな。今を一生懸命頑張ることで明日を繋いでいけるとも思っていますし」

──では、お仕事面でのターニングポイントというと何だったと思いますか？

「三代目 J SOUL BROTHERSとしてデビューしたので、そこは僕のルーツですよね。そこから俳優業をやり始めたのは本当に大きな変化だったと思います。よく“2足の草鞋”って言いますけど、業界は一緒でも職業としては全然違う。俳優業を始めたことですごく視野が広がって、より俯瞰して自分の立ち位置を見られるようになりました。昨年始めたソロでのアーティスト活動も大きかったです。あと、8年前にEXILEのオーディションを受けて、そこからグループを掛け持つことになったのも大きかった。仕事面ではその3つがターニングポイントですね」

──新しい扉を開く度に、スケジュール的には忙しくなっていくわけですよね。

「まあ、そこは全然大丈夫です（笑）。もっと大変な人はいっぱいいると思いますし」

──では、プライベートでのターニングポイントというと？

「僕の場合、近くにいてくれる友人っていうのが、ここ1年2年の付き合いではなく、本当に長い付き合いの友人ばかりなんです。業界の友達が少ないっていうことと、中高大ずっと同じ学校に通っていたっていうこともあって、それこそ親同士が仲良くてずっと家族ぐるみの付き合いをしてきたような友人も多い。だから、プライベートの大きな変化っていうとあまりないんですけど、同級生が結婚する年齢になったっていうことは少し感じています。ただ、意外と独身のヤツも多かったりするので、その友人たちがどんどん結婚していったらちょっと寂しくなるのかもしれないですね（笑）。何年か後に心にぽっかり穴が空く時が来るかもしれない」

──そういう昔からの友人と会うと、初心に返ったりリフレッシュできたりするんですか？

「そういう友達とお酒を飲んだりご飯を食べるのはリフレッシュでしかないですね（笑）。僕はよく、『仕事のストレスは仕事で発散する』って言ってるんですけど、昔からの友達と会うのは広い意味でのストレス発散ではなく、もう本当にその日の疲れを吹き飛ばすみたいなことですね。“点のストレスの発散”です（笑）」

情熱を持って目標に向かっている人は輝いて見える。それは職業も年齢も関係ない。

──では、今変わりたいと思っていることはありますか？

「去年ぐらいからずっと言ってるんですけど、久しぶりに体を鍛えようかなと。万年3日坊主で終ってしまって、最近はちゃんと鍛えてられていなくて。あとは、ゴルフもそろそろ始めたいですね（笑）」

──岩田さんはかなりの映画好きとして知られていますが、「変わりたい」と思っている人にお勧めしたい映画はありますか？

「何だろう（笑）。やっぱりのし上がっていく系がいいですかね。『ゴッドファーザー』シリーズかな。僕は特に2作目が好きです（笑）」

──ありがとうございます（笑）。では最後に、『GLITTER』という媒体名にかけて、岩田さんが輝き続ける秘訣を教えてください。

「このお仕事って、ある種“自分は輝いてる”って洗脳するみたいなところもあると思うんです。表に出るお仕事の人は、大なり小なりどこかで自分を演じている部分があると思うので、そうやって思い込むことが大事。家だと全然違うキャラクターだったりもするので、どこかでスイッチを切り替えているんですよね。僕の場合、現場に入って衣装を着てメイクをしてもらうことでスイッチが入ります。ただ、基本的には肩ひじ張らずに生きていると思います（笑）」

──では、岩田さんにとって輝いている人の条件というと？

「職業とか関係なく、“若さ”っていうのはひとつやっぱり輝いて見えるんですよね。“青春時代”っていう言葉があるように、若いっていうだけでキラキラと輝く時間だったりする。でも、誰もがやがて老いますし、終わりがあるからこそ綺麗に見えるっていうところもあると思います。情熱を持って目標に向かっている人は輝いて見えますよね。それは職業も年齢も関係ないと思います。60代の経営者の方だって、『ここからもっと事業を拡大していくぞ』と若々しく情熱を燃やしている方もたくさんいますから。そういう姿勢が感じられれば、人に限らず企業だって輝いて見えますし」

──岩田さんの場合、周りのメンバーの情熱を燃やす姿勢から刺激を受けることも多いイメージがあります。

「最近は若い世代の後輩が増えたので、そこからの刺激を感じることが多いですね。みんなガツガツしているし、もがいてもいる。僕もそういう後輩と同じくらいの歳の時は同じような感じでした。そういう部分って受け継がれていくんですよね。ただ、基本的にはみんな幸せに見えるんだけど、満たされてないというか、飢えてる感じがあるんですよね。その部分は意外と10年経っても変わらないんだよな、っていう感じもしています」

──そういう部分がこのお仕事の原動力でもあるわけですよね。

「そうですね。満足してしまうと、もうふわっと消えていってしまう世界だと思っています」

■PROFILE■

岩田剛典

1989年3月6日生まれ、愛知県出身。2010年、慶応大学4年のときに三代目 J SOUL BROTHESのメンバーに選抜される。14年、EXILEに加入。主な映画出演作品は『去年の冬、きみと別れ』（18）、『新解釈・三國志』（20）、『名も無き世界のエンドロール』（21）、『ウェディング・ハイ』（22）、『死刑にいたる病』（22）

■INFORMATION■

「バスカヴィル家の犬　シャーロック劇場版」

瀬戸内海の離島。日本有数の資産家が、莫大な遺産を遺して謎の変死を遂げる。資産家は死の直前、美しき娘の誘拐未遂事件の犯人捜索を若宮に依頼していた。真相を探るため、ある閉ざされた島に降り立つ獅子雄と若宮。二人を待ち受けていたのは、異様な佇まいの洋館と、犬の遠吠え。容疑者は、奇妙で華麗な一族の面々と、うそを重ねる怪しき関係者たち。やがて島に伝わる呪いが囁かれると、新たな事件が連鎖し、一人、また一人消えてゆく。底なし沼のような罠におちいる若宮。謎解きを後悔する獅子雄。これは開けてはいけない“パンドラの箱”だったのか？その屋敷に、足を踏み入れてはいけない―― 。終わらない謎へ、ようこそ。

全国公開中！

Photos Ken Ogawa / Styling Yasuhiro Watanabe@W / Hair&Make-up Shimokawa Shinya@BERYL / Words Kaori Komatsu / Edit Kaori Watabe