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今井 翼 interview 映画『TELL ME ~hideと見た景色~』を通して再認識したhideへのリスペクト

逝去から24年経った現在も愛され続けている、X JAPANのギタリストであり、ロックミュージシャンのhide。当時hideのパーソナルマネージャーを務め、現在はhideオフィシャルマネジメント事務所の代表を務める実弟・松本裕士氏による著作『兄弟 追憶のhide』(講談社文庫刊)を原作とした映画『TELL ME ~hideと見た景色~』が公開された。大切な人を突然失った家族や仲間が悲しみを乗り越えて行く、希望と絆の物語。主人公である弟・ヒロシがhideの共同プロデューサー I.N.A.とともに、hideが遺した音楽を世に送り出すまでの軌跡が描かれた。裕士役を務めるのは、今作が映画初主演である俳優の今井 翼。以前よりX JAPANの大ファンであることを公言し、「中学の生徒手帳にX JAPANの写真を入れていた」という彼は、「裕士」とどう向き合ったのだろうか。発売中の『GLITTER vol.4』のテーマ『Transformers! NEW OLD/NEW ME!! 〜変化変容で新しい自分へ〜』にまつわる質問も含めながら、彼の役者としての向き合い方に迫った。

 

何度もくじけながらも与えられたことに一生懸命になる。器用にできなくてもひとつひとつのことに一生懸命な裕士さんの姿を見せられたら

――以前よりX JAPANのファンであることを公言なさっていた今井さんですが、映画『TELL ME ~hideと見た景色~』の主役・松本裕士さんを演じることが決まった率直なご感想をお聞かせいただけますか?

「おっしゃっていただいたとおり僕は小学校の頃からX JAPANの大ファンで、もちろんhideさんのことも大好きでした。とても光栄であると同時に、自分なりの意志や覚悟を持って挑みたいと思いました。hideさんの急逝は社会現象になるくらい多くの人たちが悲しんだ、とても大きな出来事だったと思うんです。そのなかで裕士さんは、hideさんの弟として、パーソナルマネージャーとして、紆余曲折しながらいろんな人たちの力を借りてhideさんの残したものを世の中に出そうと奮闘していく。そんな裕士さんの気持ちを丁寧に、しっかり演じたいと思いましたし、それを通してhideさんの魅力を伝えたいと思いました」

――今井さんが思うhideさんの魅力といいますと?

「音楽性はもちろんですけど、人柄もです。すごく型破りで豪快なんだけど、音楽が大好きで憎めない存在。だからカリスマと呼ばれたと思うんです。たくさんの人に支持されていたからこそ、ファンもhideさんに強い思いを持っていた。だからhideさんが残したものの扱い方に、当時ものすごく賛否両論が上がりましたよね。でもhideさんの仲間も裕士さんも共通して思っていたことは、“hideさんの残したものを守り抜く”ということだったと今作を演じながら感じました。この映画を通して、それが伝わってくれたらうれしいです」

――『TELL ME ~hideと見た景色~』の原作は、松本裕士さん著『兄弟 追憶のhide』です。裕士さんを演じるなかで、今井さんは松本兄弟にどのような印象をお持ちになりましたか?

「『TELL ME ~hideと見た景色~』でも幼少期の松本兄弟のエピソードが描かれていますが、それは裕士さんの視点で。裕士さんにとってお兄さんであるhideさんは成績優秀で、早くから音楽の才能を開花させて、常に褒められていて自分の友人からも憧れられる存在だった。やっぱり弟の裕士さんからすると、いつも褒めてもらえない状況にもやもやしてしまったり、どうしてもそこに嫉妬の感情を抱かざるを得なくて。だけどhideさんにとっても、裕士さんにとっても、お互いが大切な存在だと思いました」

――アーティストとパーソナルマネージャーとしての関係だけではなく、幼少期から同じ時間を過ごした兄弟同士としても大切な存在であると。

「幼少期の頃も大人になってからも、hideさんは裕士さんのことをちゃんと気に掛けていたはずです。音楽の知識のない裕士さんをパーソナルマネージャーにつけたのは、hideさんの思いあってこそだと思う。でも裕士さんにとっては、もともと普通の兄弟同士だったはずが突然両親に『秀人のマネージャーになってくれ』と言われて、何も言い返すことができずに知識やキャリアがない状態でマネージャーを務めることになって。とても大変なことだったと思います」

――映画ではふたつの関係性を持ったhideさんと裕士さんが、繊細なタッチで描かれていました。

「裕士さんもマネージャーとして、アーティスト・hideをサポートすることが最初のうちはなかなかうまくいかなくて。裕士さんは何度もくじけながらも、とにかく与えられたことに一生懸命になる。器用にできなくてもひとつひとつのことに一生懸命な裕士さんの姿を見せられたらと思いました」

 

hideさんは唯一無二のアーティスト。今hideさんが生きてたら、どんなことに興味を持って、どんな音楽を作っていたのかなと思うことがよくある

――hideさんの弟を演じてみて、あらためて今井さんは「hide」というアーティストにどのような印象を抱きましたか?

「やっぱりhideさんはすごく偉大な人だと痛感しました。YOSHIKIさんという絶対的な存在がいるX JAPANの中でも存在感を放っていて、精力的な活動をし続けていて。1997年にX JAPANが解散して(※2007年に再結成)、半年足らずでhide with Spread Beaverというバンドで動き出したことで、より独自のスタイルを貫いていった。それができたのは、映画でも描かれているとおり、納得いくまで何テイクもレコーディングしたり、妥協を許さずすごくストイックな方だったからこそだと思います」

――音楽にストイックだったからこそ、hideさんは多くのファンの心を掴んでいったと。

「音楽だけでなくファッションにもhideさんのアイデアが溢れていましたよね。実際にそのファッションを真似する人がたくさん出てくるくらいhideさんのセンスは魅力的で、素敵なアーティストがたくさんいる今の時代においても、hideさんは唯一無二のアーティストなんです。だから、もし今hideさんが生きてたら、どんなことに興味を持って、どんな音楽を作っていたのかなと思うことがよくあります」

 

今はお芝居を通して、いろんな人物になっていくことで皆さんに楽しんでいただきたい

――裕士さんもhideさんのマネージャーになり人生が激変しましたが、発売中の『GLITTER vol.4』のテーマが“トランスフォーム”であることを受けて、今井さんの人生のターニングポイントをうかがいたく思います。

「たくさんいろんなきっかけをいただいているので、ひとつに限定するのが難しいんですけど……直近だとやはり、30代後半でお仕事をお休みした期間です。この期間に、じっくりといろんなことを見つめ直してみました。14歳でこの世界に入って、ありがたいことに絶え間なくお仕事をさせてもらっていたので、お休みの期間にこれまでにやってきたことの基礎をちゃんとやり直してみることにして」

――たとえばどのようなことでしょう?

「踊りや演技などの表現活動だけでなく、私生活も。電車移動をしてみたり、素朴でアットホームな飲食店に行って、常連さんと仲良くなったり。休んだからこそ得られた幸せもあるし、それまでの人生も幸せでとても贅沢だと感じたんです。やっぱり人間は欲のある生き物なので、芸能のお仕事ができる喜び、台本もらえる喜び……お休みをいただく前もそれが当たり前だとは思っていなかったけれど、改めてその幸せを噛み締めたんですよね。40代に向かっていくタイミングでいろんな気づきを得て、それと向き合えたことはひとつの大きなターニングポイントになりました。この期間がこの先の自分にとっても大事なターニングポイントだったんだと思えるように過ごしていきたいです」

――そのターニングポイントがきっかけで生まれた目標などはありましたか?

「今はお芝居を通して、いろんな人物になっていくことで皆さんに楽しんでいただきたいです。今井 翼というイメージを壊すということではなく、“今井 翼にはこういう面もあるんだ”と思ってもらったり、いろんな面を楽しんでもらえたら」

――様々なことに挑戦できるバイタリティがあるからこそできることですね。

「新しいことに挑戦していくと自分自身も成長できるし、それを観ていただく皆さんにも面白がっていただきたいです。これまでの固定観念を持たずに活動を観ていただけたらうれしいですし、僕自身もトランスフォームを求めるというよりは、結果的にそれがトランスフォームにつながるようにしたいです」

 

縁が重なることで、人として深く関わり合える。その関わりのなかで自分自身が生かされている

――『GLITTER』という媒体名にかけて、今井さんが思う“輝いている人”とはどんな人でしょうか?

「自分の好きなものを、純粋に愛してる人。そこに尽きると思います。何かに一生懸命になってる人ってすごい素敵ですし、そこに立場や内容は関係ないですよね。不器用でも一生懸命、目標に向かっていく姿はとても眩しく感じます」

――そんな今井さんが輝き続けられる秘訣とは?

「いやいや、自分が輝いているとは到底思えないです(笑)。僕の仕事は僕ひとりの思いだけでは成立しないし、身の回りの方々からのいろんなサポートがあって、さらにご縁があって、そのご縁がさらにユーザーの皆さんとのご縁をもたらしてくれるんですよね。縁が重なることで、人として深く関わり合える。その関わりのなかで自分自身が生かされているんだと思います。だから決して自分では自分が輝いてるとは思えないですけど(笑)、より良い仕事をするための原動力にはファンの皆さんの存在がすごく大きいですね」

――協力してくれる、応援してくれる人が、ご自身を輝かせてくれるということですね。

「本当にそうです。もしかしたら演技以外の活動を求めている人もいるかもしれないけれど、復帰してからも引き続き眩しい光をたくさんいただいているからこそ、今はいろんな役柄を演じることで、これまでとは違う今井 翼を面白がってもらえたらと。僕はやっぱりファンの皆さんや、人を喜ばせることが僕は好きだからこの仕事をやっているんですよね。だから、輝いていると思っていただけるのかな……(笑)。自分のやりたいことをできているからこそ僕の心もときめくというか、弾けるんだろうなと思います」

 

■PROFILE■

今井 翼

1981年10月17日生まれ、神奈川県出身。1995年より芸能活動を始め、俳優、歌手、タレントとして、映画、TV、舞台など多彩なジャンルで活躍。2020年、大河ドラマ「麒麟がくる」、「おじさんはカワイイものがお好き。」などに出演。映画では、『終わった人』(18)、『彼女が好きなものは』(21)など。本作が映画初主演。

 

■INFORMATION■

©2022「TELLME」製作委員会

 

『TELL ME ~hideと見た景色~』

1998年5月2日、X JAPANのギタリストとして、ソロアーティスト(hide with Spread Beaver/zilch)として活躍していた、日本を代表するロックミュージシャンhideが急逝。葬儀には約5万人が訪れ、日本中が早すぎる別れに涙し社会現象に。hideのマネージャーを務める弟・松本裕士(ひろし)は、兄hideと過ごした子供時代から今までの日々を思い返していた――。制作途中だったアルバム、そして既に決定していた全国ツアー、hideの音楽を世に届けたい。兄の意志を継いだ裕士は、hideと二人で楽曲を制作していたhideの共同プロデューサーI.N.A.ら仲間たちとともに動き出す。hide本人不在という異例の状況下で奮闘する裕士とI.N.A.だったが、彼らの前に様々な困難が立ちはだかる……。

 

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Photos Yukie Abe / Styling Nao Watanabe@Creative GUILD / Hair&Make-up Keiko Nakatani@AVGVST / Words Sayako Oki / Edit Kaori Watabe

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