藤原大祐interview 初主演映画『追想ジャーニー』で開く新境地――そして、前を向き続けるエネルギーの源に迫る
話題のドラマ『純愛ディソナンス』『差出人は、誰ですか?』などに出演し、幅広い表現力で活躍の場を広げている藤原大祐が、谷健二監督がメガホンを取る『追想ジャーニー』で映画初主演を果たした。藤原が演じる高校生の文也が突然不思議な世界に誘われ、高橋和也が演じる30年後の自分と遭遇するーーというミステリアスなシナリオで、まるで舞台のような生々しい芝居を披露している。“笑顔”や“幸せ”などのポジティブな言葉をキーワードに成まっ只中の彼が挑戦的な作品で得た刺激とは? 芯にある“夢”、そして発売中の『GLITTER vol.5』の大テーマである『Glittering Stars!』についても語ってもらった。
台本通りじゃないところもあるくらい、本当に役の中を生きた感覚だった。
――初主演映画ということで、本作の台本を呼んだ時の印象はいかがでしたか?
「谷監督には以前から『一緒にやりたいね』という話をいただいていました。ですが、いろんなことが重なってなかなか実現せず、本作でようやく念願が叶いました。だから、特に初主演という肩書きを感じることなく、谷監督の作品に携わることができて嬉しかったです。台本を読んだらすごく面白い設定で引き込まれたし、高橋(和也)さんと一緒にお芝居できるということで、ワクワクしながら現場に入りました」
――舞台作品のような構成と演出で、新感覚の映画になっていますよね。
「そうですね。映画だけど、芝居のテイストを映画にしすぎてはいけないとか、その塩梅に関しては結構悩みました。現場で高橋さんや共演者の方とお芝居しながら考えたり、実際にホールで撮影させてもらったので声の響きを考えたり……やりながら肌で感じて掴んでいきました」
――高橋さんが「わずか3日間で劇場用映画を撮影したのは初めて」とコメントされていましたが、藤原さんも3日間で?
「はい。1日のスケジュールに48ページって書いてあったのは初めてでした(笑)。ドラマだとだいたい1日12~13ページ程度だし、撮影時期がほかの作品との間だったこともあって、けっこう過酷ではありました。でも、過酷なのはほかのキャストさんもスタッフさんも同じですし、まさにみんなでひとつの舞台を作り上げているような感じだったと思います。撮影自体もほぼ順撮りでやらせてもらえて、台本通りじゃないところもあるくらい、本当に役の中を生きた感覚でした」
――高橋さんの若い頃を演じるということについてはいかがでしたか?
「高橋さんの若い頃を演じるというよりは、ふたりで一人の“文也”像に近づけていくという考え方に近かったかもしれないです。お互いの芝居を見ながら、その間を繋ぐ線は自分で想像するような。同じ役を演じているんだけど、同じじゃないのが面白さだと思います。30年経つとやっぱり価値観も全然違うし、同じ瞬間を生きていたはずなのに変わっちゃうんだなあと思うと、儚さも感じますよね」
今を強く生きたい。過去を認めてあげるのも今だし、未来に希望を抱くのも今。
――藤原さんは「どうも今の自分と重なってしまって。自分もこうならないように頑張ろうと思えました!(笑)」コメントされていましたが、ご自身と重なった部分というと?
「年齢も近いし、僕も文也と一緒ですごい夢見がちで(笑)。こういうふうになりたいとか、夢を持っていいと思って生きているので、ちょっと境遇が似ているからこそ気持ちが入りました。あと、『こうならないように』とは言いましたけど、彼の人生がダメだったとは思っていなくて。そこは彼の人生だし、何かに気づけたんだとしたら、それはそれでよかったのかなと思います」
――観た人の年齢や環境によって感情移入できる部分が変わる作品だと思うんです。藤原さんは今作からどんなメッセージを受け取りましたか?
「今を強く生きたい、ってことですね。過去を認めてあげるのも今だし、未来に希望を抱くのも今なので。いろいろ考えてもしょうがないから、今できることを全力でやっていきたいです」
――俳優として、成長に繋がった点は?
「たくさんあります。長尺をひとりで演じる中で、感情の起伏を自分で作らなきゃいけないところもありましたし、単純にセリフ覚えもとても練習になりました。ベテランの高橋さんと一緒にやらせてもらうことで、同世代の役者さんと演じる時とはまた違ったベクトルのお芝居を肌で感じさせてもらうことができたのもありがたかったです。きっとこの経験が、また今の僕を作ってくれているんだろうなと思います」
未来の可能性は無限大なんだと信じて頑張る今が好き。
――もし、藤原さんが「今、30年後に行く」か、「30年後、今に戻る」かどちらかを選べるとしたらどうしますか?
「『30年後、今に戻る』ですね。未来を知りたくないというのがまずひとつ目の理由。未来を知らないからこそ今が楽しいんだと思いますし、未来の可能性は無限大なんだと信じて頑張る今が好きなんです。ふたつ目の理由としては、また戻ってきたいと思えるくらい今が楽しいから。ただ、30年後も今に戻りたくないと思うくらい幸せでいたいですけど。僕は毎日、常に幸せを更新しているので」
挑戦しないともったいないことが多いし、何事も恐れずに飛び込むタイプ。
――発売中の最新号『GLITTER vol.5』のテーマが“Glittering Stars!”なんですが、藤原さんが輝いていると思うのは、どんな人ですか?
「知らない事に恐れずに挑戦する人です。そういう人に憧れるし、変な話ですけど、僕自身の魅力もそこなんじゃないかなって自分で解釈しています。挑戦しないともったいないことが多いし、何事も恐れずに飛び込むタイプなんです。年齢関係なく挑戦している人を見るとかっこいいなと思いますし、僕も勇気をもらいます。だからこそ自分もそうありたいです」
――具体的に影響を受けた人などはいますか?
「起業家の方たち。インフルエンサーでありつつ、起業している方が最近多いじゃないですか。そういう方の話が大好きで、インタビューをよく読んでいます。最近は役者の方々もいろいろなことに挑戦していて、職業を越えて活動されていますよね。みなさん素敵だなと思いますし、そこで自分の気持ちを高めて、僕も頑張るっていう感じです」
――すごい人を見ると自分も頑張らなきゃって思うんですね。
「負けず嫌いすぎる性格なので(笑)。負けていられないなって思います」
――人生で一番輝いていたと思うときは?
「“今”ですかね。常に“今”って言っていたいです。具体的に何がというとちょっと難しいですが、僕はなかなか到達できない夢を掲げて走っているので、その夢さえ見失わなければ大丈夫だと思っています」
――ちなみに、その夢とは?
「 “世界中の人を笑顔にしたい”というのが僕の夢です。一生かけても完了できないのはわかっています。でも、それを追いかけることで、自分の知らないことにずっと挑戦し続けていけるじゃないですか」
――素敵な夢ですね。どんな時に笑顔を届けられたと実感しますか?
「作品の感想をもらった時や『見たよ』と言われた時だったり、ささやかなことでも感じます。テレビ越しでも一緒にいる時でも、1秒でも誰かのことを笑顔にしたいという気持ちがあって。笑顔じゃなくて涙でもよくて、心に響いて感動させられたらいいなと思っています」
感謝を忘れずに、光を届け続けていきたい。
――では、最近の輝きゴトというか、ハマっていることはありますか?
「最近は筋トレです。筋トレをしていると気分が上がるし、やっぱり男としてかっこよくいたいじゃないですか。筋肉は裏切らないって言葉があるとおり、ちょっとずつ結果が出てくるのは嬉しいですね」
――最後に、輝く秘訣や輝き続ける秘訣を教えてください。
「何事もポジティブに考えることですね。自分の失敗もそうですし、いろんな人に支えられて生きているからこそ、誰かが失敗したらその影響が自分に回ってくることもあるし。そういうことに対していちいちネガティブに捉えるんじゃなくて、ポジティブなことを多く考えるほうが人生がハッピーになると思います。マイナスなことよりも、そこからどうプラスにもっていくかな気がします」
――言葉の端々から藤原さんのポジティブさが伝わってきますが、もともと前向きな性格なんですか?
「失敗して落ち込んじゃう時はあります。でも、落ち込んでいてもしょうがないので、そういう時にポジティブに切り替えるのは大切にしています」
――今年高校卒業して、19歳になったという節目で。これから20代に向けて気持ちの変化は感じますか?
「うーん……自立していきたいとかは、特に意識していなくて。どうやっても誰かに支えてもらえないとやっていけないからこそ、支えてもらっている人への感謝がより強くなりました。少なくとも近くに居る人は幸せにしてあげたいし、その幸せの輪がいろんな人に広がっていくといいなって。エンタメの仕事をやらせてもらう中で、テレビやいろんな媒体を通して幸せを届けられることが、僕にとっても幸せなので。その幸せの輪を広げられたらいいなという気持ちが一番強いです。だから、とにかく感謝を忘れずに、光を届け続けていきたいと思っています」
■PROFILE■
2003年10月5日生まれ、東京都出身。2019年にデビュー後、『おじさんはカワイイものがお好き。』(2020)『恋する母たち』(2020)『推しの王子様』(2021)『教祖のムスメ』(2022)『純愛ディソナンス』(2022)など、立て続けにドラマ出演。さらに映画『モエカレはオレンジ色』(2022)に出演し注目を集めた。現在、ドラマ『差出人は、誰ですか?』にレギュラー出演中。
■INFOMATION■
高校生の文也(藤原大祐)は母親とケンカし、勉強もしないで居眠りしてしまう。気がつくと何故か舞台の上におり、目の前には見知らぬ男(高橋和也)がいた。やがて同級生で幼なじみのくるみとクラスメイトのゆりえが舞台上に現れ、どちらと付き合うか決めるよう迫られる。夢なのか現実なのかも分からない中、見知らぬ男はこれが現実であり、自分は30年後の文也だと話す。そして文也がいる舞台は、過去の出来事を追想してその時に選択した内容を変えられる不思議な場所だったーー。
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Photos Hirohisa Nakano / Styling Takashi Yamamoto / Words Hiroko Goto / Edit Kaori Watabe