中川大志interview 主演音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』との向き合い方と煌めきの根源を語る
東京を代表する劇場「明治座」と映画製作・配給会社「東宝」と舞台製作会社「ヴィレッヂ」の同じ年齢の男性プロデューサー3名が立ち上げた“三銃士企画”の『両国花錦闘士』に続く第2弾。昭和40年代の歌謡界を舞台に、醜い風貌の男が華やかな昭和のスターへと変身し、一族への復讐を遂げる様を描く音楽×笑い×涙×勧善懲悪のスペクタクル劇で、本格的舞台初挑戦で初座長を務める、中川大志。さまざまな期待を背負い、1か月半に及ぶ集中稽古に挑んで昭和の男になりきった彼に、本作への想いや心境、そして媒体名『GLITTER』=「輝き」についても話を聞いた。
「鳴尾 定」「桜木照彦」は精神的にも体力的にもハードで、エネルギーを使う
――舞台の稽古は、いかがでしょうか?
「1か月半も稽古期間があるということは自分にとっては初。とても楽しみではあったのですが、稽古場というものに慣れてはいないので、日々の取り組み方や稽古の積み上げ方に最初は戸惑っていました。でも、優しくて頼りになる先輩方がたくさんいらっしゃるので、本当に心強いです。僕の演じる『鳴尾 定』『桜木照彦』(2役)は精神的にも体力的にもハードなので、エネルギーを使うんです。稽古が始まったばかりのときは、自分を追い詰めて稽古場の隅っこでひとり、台本とにらめっこしていたのですが、みなさんが声をかけてくださって。それから少しずつコミュニケーションも増えて、それと同時にチームの雰囲気ができあがっていったのを感じました」
――不遇な宿命を背負った鳴尾 定は桜木照彦という人気歌手になりますが、その桜木輝彦名義で配信/LPレコードデビューをされますね。最近はアナログレコードが流行していますが、中川さんはアナログレコードをお持ちですか?
「以前、昭和40年代のジャズバンドを描いた、映画『坂道のアポロン』に出演させていただいたのですが、劇中にもアナログレコードが出てきたり、実際にレコードに触れる機会がありました。それもあって、ずっとアナログレコードに興味を持っていました。『自宅でレコードを聴きたいな』と思っていたのですが、僕は結構な凝り性なので、きっと針とかスピーカーとか凝り出して、1回手を出し始めたら引くに引けなくなってしまうのではないか、と少し不安で……」
――では、気にはなっているけど、手を出していない?
「いや、それでタイミングを探していたのですが、『今がタイミングだ!』と思い、2022年に入ってすぐにレコードプレイヤーを買いました。アナログレコードはまだたくさん持ってはいないですが、休日にレコードショップに行ったり、知り合いからいただいたアナログレコードを聴いたりして過ごしています。でもまさか、レコードプレイヤーで自分の歌を聴けるとは思ってもいなかったですね(笑)」
『桜木の復讐劇の始まり』というか、突き進んでいくスタートの合図のような意味を持つパワフルな楽曲
――桜木輝彦の『彼方の景色』『失われた時に』は、どんな楽曲と捉えていますか?
「桜木輝彦(鳴尾 定)の原動力である、怒りや憎しみ、トラウマといった負の感情がエネルギッシュなサウンドに込められたナンバーです。作詞は演出家の倉持 裕さんが担当されていて、桜木が見てきたであろう景色が歌詞に表現されています。『彼方の景色』は特に、“桜木の復讐劇の始まり”というか、突き進んでいくスタートの合図のような意味を持つ、パワフルな楽曲です。サウンドも現代とはまた違って、すごくシンプルですが、昭和歌謡の熱いエネルギーが詰まっていてかっこいいです。音楽番組でバンドメンバーや管楽器を演奏する方々がブワーっと並んでいる様子が目に浮かぶような、賑やかで華やかなサウンドになっていると思います」
――この舞台のために1年半前からボイストレーニングや体力づくりを始められたそうですが、稽古に入ってその手応えや変化を感じていますか?
「技術的なことというよりは、体の耐久性を上げていくという意味でボイストレーニングを始めました。全部で48公演、歌って芝居をするので、そこに耐えられる発声の仕方だったり、呼吸の仕方だったり、軸となるような部分を作るべく地道なトレーニングから始まりました。自分の進化も感じていますが、まだまだだと思うところもあります。でも、手応えは確実にあります!」
――歌うことはもともと好きでしたか?
「10代の頃は、自分でギター弾きながら歌ったりしていました。カラオケでは尾崎 豊さんやTHE YELLOW MONKEYさんの楽曲をよく歌います。親の影響も大きいと思います」
メイクで洋服でも、人間はまとっているものからもらうエネルギーがすごくあると思う
――公開された舞台のビジュアルでは、桜木輝彦はゴールドのジャケットを着ていますが、名前も“輝彦”ですし、舞台ではキラキラした中川さんが見られそうですね。
「どうでしょうか(笑)。昭和の芸能界の豪華できらびやかで派手な感じは出ています。美術や衣装、メイクなどでキラキラ感は感じていただけると思います」
――中川さんご自身はプライベートで、キラキラしたものを身につけることはあります?
「普段の僕は大体シンプルで落ち着いた色合いのものを身につけることが多いです。ゴールドの上下なんて、仕事でもなかなか着ないです(笑)。でも今回は昭和をテーマにした舞台だからこその、アイテムやカラーの組み合わせを着させていただくので楽しみですね」
――弊誌の媒体名が『GLITTER』で「人生を輝かせる!」という想いがコンセプトとしてあるのですが、女性はグリッターやラメなどで煌めいたメイクをしたり、輝かしいアクセサリーなどを身につけると気分が盛り上がったりもしますが、中川さんはいかがでしょうか?
「僕も気分が上がりますね。メイクでも洋服でも、まとっているものからもらうエネルギーは大きいと思います。桜木輝彦のキラキラの豪華な衣装を着ると、テンションも上がるし、すごく強くなった気持ちがしますね(笑)。桜木輝彦になりきる力をくれるというか、一段階ギアを上げることができる衣装が着られそうです」
“自分の心が動くものを持っている”ということはとても大切
――さらに媒体名に掛けた質問をさせていただきます。中川さんご自身が「輝いている瞬間」はどんなときか教えてください。
「魚を釣り上げたときですかね(笑)。やっぱり自分が好きなことをやっているときが、一番輝いている瞬間だと思います」
――中川さんが輝き続けられるのは、ご自身が楽しめることを持っているから?
「自分が輝き続けているかどうかは、あまり考えたことがないのですが(笑)、“自分の心が動くものを持っている”ということは、とても大切だと思います。ワクワクできるものは仕事でも遊びでも、なんでもよくて。そういうもので自分の心が動く瞬間に、人は輝くのではないかと思います」
――“人”でいったら、どんな方に惹かれるのでしょうか?
「歳を重ねても子どもみたいにはしゃいでいる人を見ると、僕はカッコいいと思います。自分の好きなことにすごく一生懸命だったり、がむしゃらにやっている人は、年齢を問わず素敵です。これから僕も30代、40代と歳を重ねていくので、特に年上の男性の先輩方には刺激を受けますね」
――本作の出演者やスタッフには、刺激を受けられる先輩がたくさんいらっしゃいますね。
「演劇の大先輩である、山内圭哉さんや池田成志さんに、いろいろ相談したりアドバイスをいただいたりしています。そういった直接的なこともありますが、ただ見ているだけでも刺激をもらうこともたくさんあります。映画やドラマなどの映像の現場では1回できあがったものを“0”にして、別の方向性を探ることはなかなかできない。でも、1か月半の稽古期間では、『別の方法があるかもしれないので探ってみよう』という時間もあって、先輩方が導いてくれることがあるんです。本当に毎日刺激を受けています」
――演出の倉持 裕さんから、言われたことで印象的だったことはありますか?
「役づくりをはじめ、日々細かい話はたくさんさせていただいています。最初の頃は不安があって、なかなか稽古のペースなどがつかめないこともあったのですが、『ゆっくり焦らないでやるから大丈夫』と声をかけていただきました」
自分の名前が入った作品に出演するなんて後にも先にもない(笑)
――今回中川さんは、ご自身の名前が入ったタイトルの舞台に出演するわけですが、どういうお気持ちでしょう?
「うれしいというか、変な感じですね。自分の名前が入った作品に出演するなんて後にも先にもないんじゃないかな(笑)」
――ご自身の名前が入っている通り、今回の倉持さんによる脚本は、中川さんに“あてがき”をされたそうですが、ご自身に“合っている”と感じた点は?
「最初の段階から、“あてがき”だという認識で脚本を読んではいなかったので、全くそういう感覚はありませんでした。“あてがき”は、『その人のイメージに合わせて書く』ということではないのかなと思っています。『この人にこういうこと言わせたらどうだろう?』といった感覚で脚本を作っていただいたのかなと。僕に合わせて書いているというわけではないと思うので、自分のイメージに合っていると感じたところはあまりなかったです」
舞台での鳴尾から桜木への”変身“も含めて見せ方、表現の仕方を考えていきたい
――映像作品と違って舞台では、いろんな角度から、お客さんに全身を見られるわけですが、その準備としてはどんなことをされていますか?
「いろいろと想像して、そこに向けた自分の体のトレーニングをしてきたのですが、想像以上にエネルギーを使いますね。今回の舞台は、イギリスの劇作家ウィリアム・シェイクスピアの『リチャード三世』をベースにしたもの。鳴尾 定、桜木輝彦は、その“昭和歌謡版”という設定です。リチャード三世は、体が歪んでしまった状態で生まれてきた男で、それを舞台でどういうふうに表現するのがいいのか、映像とは違う表現方法を探っているところです。内面の部分の作り方は映像と変わらないですが、今回は舞台での定から桜木への”変身“も含めて見せ方、表現の仕方を考えていきたいです。桜木と定はまとっているオーラや姿形が全く違うので、お客さんに驚いていただけるような変身ができれたらいいなと思います」
――観に来る方にはどんな準備がおすすめですか?
「これまでの『リチャード三世』とは全く別のアプローチなので、観たことがある方も新鮮に楽しんでいただけますし、観たことがない方も全く予習の必要はないので、そこは安心してください。開幕日の11月6日に桜木輝彦のアナログレコードが発売されますが、楽曲は10月24日からすでに配信されています。曲を聴いてから舞台を観ていただけると、定がどういう人生を送ってきたかということを理解していただけると思います。公演が始まる前に配信できたことはすごく意味があると思っているので、ぜひ、聴いていただき、会場に足を運んでいただければうれしいです!」
■PRESENT■
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【応募方法】
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【応募締切】
2022年12月4日(日)23:59
※ご当選者様にはDMでご連絡を致します。抽選時にフォローを外されている方は対象外となりますのでご了承ください。
■PROFILE■
1998年6月14日生まれ。東京都出身。2009年、俳優デビュー。2011年、ドラマ『家政婦のミタ』で脚光を浴び、【ドラマ】NHK連続テレビ小説『なつぞら』(19)大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(22)【映画】『坂道のアポロン』(18)『砕け散るところを見せてあげる』(21)など、数々の作品に出演。2022年12月23日に映画『ブラックナイトパレード』、2023年2月には映画『スクロール』の公開を控えている。
■INFORMATION■
作・演出:倉持 裕
出演:中川大志/松井玲奈 福本雄樹/浅利陽介 中村 中/山内圭哉/池田成志 ほか
<東京公演>2022年11月6日(日)〜30日(水)明治座
<福岡公演>2022年12月8日(木)〜12日(月)キャナルシティ劇場
<大阪公演>2022年12月17日(土)〜25日(日)新歌舞伎座
主題歌『彼方の景色』/劇中歌『失われた時に』配信&アナログレコード発売中!
唄:桜木輝彦
作詞:倉持 裕
作曲:和田俊輔
編曲:的場英也
Photos Ken Ogawa / Styling Tsuyoshi Takahashi / Hair&Make-up Asako Satori@Vitamins / Words Hiromi Yamanishi / Edit Kaori Watabe