AI interview 約4年ぶりのオリジナルアルバム『DREAM』の根底にあるものとはーーNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』主題歌『アルデバラン』の裏話も!
「笑って、笑って」。NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』で毎日流れる切なく優しく歌声は、2022年の今、将来に不透明なものを感じながら暮らす人々の心に寄り添っている。2022年を象徴する1曲となりそうなこの『アルデバラン』を含む、約4年ぶりのオリジナルアルバム『DREAM』をリリースしたAI。コロナ禍で制作されたこのアルバムと、満を持して5月より開催される全国ツアー、さらには発売中のGLITTER vol.3のテーマである“セクシュアル”と“リレーションシップ”に至るまで、AIの現在の想いを語ってもらった。
コラボ相手は「カッコいいな」「素晴らしいな」と才能を感じて、その方が好きだと思えたらご一緒したいと思う
――ご自身の楽曲『アルデバラン』が主題歌となっているNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』は、毎日ご覧になっていますか? 周りの方々の反響なども教えてください。
「もちろん観ています。キャイ〜ンの天野ひろゆきさんと英語講師の大杉正明先生とNHKの英語講座『ラジオで!カムカムエヴリバディ』をやらせていただいているのですが、もうドラマの話で盛り上がりすぎて、先に進まないくらい(笑)。自分の歌を毎日、半年間かけてくれるなんて、なかなかないですからね。NHKは全国放送だから、地元の友達に『カムカム、面白いね』と連絡もらったり、近所の方からも『観てるわよ』って言われたり。私は出てはいないんだけど、『ありがとうございます!』と返しています(笑)」
――今やAIさんを知らない人はそんなにいないとは思います。
「いや、私を知らない方はたくさんいますよ。曲は知っているけど、どんな人が歌っているかは知らない場合も多いです。『カムカム』で知名度が上がったかはわからないですね。コロナ禍だからか、あまり実感はないです」
――そのコロナ禍を経て、音楽への向き合い方は変わりましたか?
「変わりましたね。今まで散々会場のみんなと歌ってきたし、客席からステージにあげたりしてきたから。私のライブは、距離の近さが大事だったんです。それが全部ダメになって『どうしたらいいんだろう?』というのと、そもそもみんなにも『ライブに来て!』とも言えないような雰囲気。そういうのがやはり最初は大変でしたが、コロナ禍を経て、だんだんどうしていくのがいいかわかってきた。ちょっとずつよくなっていくことを期待しつつ、5月から開催される全国ツアーでは、全てのスタッフが厳重な対策をしてみなさんをお迎えするようにしています。でもまだまだこれからも安全に実施できるよりより方向を考えていかなくてはいけないと思っています」
――ご自身はどんな対策を?
「感染予防は徹底してます。今はなるべく外に出ないように、ご飯もテイクアウトにしていて。安全で健康じゃないとこの先外出もできないから、健康はやっぱり大事だなと思って実践しています」
――アルバム『DREAM』は完全にコロナ禍中に制作したんですか?
「2曲くらい、曲はコロナ禍前にできていたかな。『First Time』『Lessons』はできていたけど、レコーディングは全てコロナ禍です」
――『First Time feat.RIEHATA』は世界的トップダンサー・RIEHATAさんとのコラボレーション曲ですが、AIさんがコラボ相手を選ぶ基準を教えていただきたいです。
「『カッコいいな』『素晴らしいな』と才能を感じて、その方が好きだと思えたらご一緒したい、それだけかな。『一緒に歌いたい』『この人がやってくれたらこの曲は最高になる』とか。あとはどういうメッセージを伝えたいアーティストで、それがその人の人生と合っているかを感じられること。『First Time』はまさにそうですね。歌ももちろんうまいし、彼女も子供がいながら一緒にツアーを回って、そのときが大変だったのも見ている。これはそんなに簡単なことではないし、この歌の持っているメッセージにぴったりだなと。コラボすることでダンサーだけでなく、いろんな人に勇気を持たせてくれる説得力があるんじゃないかなと思いましたね」
――『IN THE MIDDLE feat.三浦大知』『THE MOMENT feat.¥ellow Bucks』の三浦大知さん、 ¥ellow Bucksさんはいかがですか?
「大知くんとは『一緒に何かやりたいね』と会うたびに言っていて。ついにオリンピックが日本で開催されるし、やっぱり人は平等であってほしいなと思うし、単純に“平和”が好きなので、そういうメッセージを込めた曲を作りたいと思っていたんです。大知くんって本当にいつもいい人なんですよ。すごい平和だし、真面目だし。基本、私はいい人とじゃないとコラボしたくなくて。今まで一緒にやってきたラッパーもみんな本当にいい人ばかり。¥ellow Bucksも超いい人。私は常に若手ラッパーに注目しているんですけど、DJ RYOWくんが、『¥ellow BucksはAIのツアーに出ていたAK-69を観てラッパーになろうと決めた。AIのこともリスペクトしている』と教えてくれて。そりゃあもう、コラボするしかないでしょ。実際のところ、プロになろうと思ったのは私を観てではなくてAKくんだったんですけど(笑)。そのとき¥ellow Bucksは小学生くらいで、お母さんに連れてこられたんだって。もしかしたら嫌々私のライブに来てたかもしれないけど、ステージのAKくんを見て、ああなりたいと思ったなんて、嬉しいじゃないですか。声をかけたとき『母ちゃんが喜びます』って言ってくれて。お母さんともお会いしたんですけど、これがまた本当にいい方で。本当にいい人であるということは大事。リリックにも出ますから。¥ellow Bucksくんのリリックもかっこいいんだけど、かっこつけてるだけじゃない。『THE MOMENT』で“笑えなきゃグリルの意味なんてねぇぜ”(※グリル=歯の上につけるアクセサリー)という歌詞があるんですが、笑おうよ、笑顔になろうというメッセージを遠回しに言っているわけですよ、悪ぶりながら(笑)。そういう感覚がすごくいいなと」
――歌詞は話し合いながら?
「『私はここ書いたから、続き書いて』とか、『ここでこういうことを私が言うから、こういう風にしてほしいとか』リクエストを出しながら。大知くんには大知くんに書いてほしいところを空けておいて、考えてもらいましたけど。歌詞というのはその人が出るので、私も共感しないと一緒に仕事をするのが難しいし、人としていいなと思っている人だと歌詞もスムーズに共作できますね」
『アルデバラン』は森山直太朗くんが歌っている感じを知っているから、それに近づけたいなと思う瞬間もあります
――『アルデバラン』は森山直太朗さんが作詞・作曲を担当されていますが、ご自身で作詞・作曲を担当された楽曲と、歌うことにおいて気持ちは違いますか?
「ぜんぜん違います。『アルデバラン』は歌っていても楽しい。ちょっとカラオケに行ったときの気持ちに似ているんだけど、毎回が挑戦。でも『今日は完璧に歌えた』っていう日がまだない、そういう感じです。今はこの曲がどんどんうまくなっていく途中のような気がしています。自分の作った曲は、楽しさがちょっと消える……(笑)。自由に歌えるんだけど、責任感がのしかかるから。『アルデバラン』は、森山直太朗くんが歌っている感じを知っているから、それにも近づけたいなと思う瞬間もあります。彼の裏声はきれいだし」
――森山直太朗さんは「自分のために書き始めていたけれど、途中でこれはAIさんが歌うべき曲だ」と思われたわけですよね。
「この前、NHKの『SONGS』という番組で一緒に歌ったんです。私が1番を歌って、彼が2番を歌って。彼が歌い出した瞬間、うわっ!という感じでしたね。なんだよ、本家!って(笑)」
――アルバムタイトルの『DREAM』は、いつ決まりました?
「最後のほうです。今年はこのアルバムのツアーで全国を回るので、夢のあるツアーにしたいなと思っていて。『DREAM』という言葉を使うのは今まではちょっと恥ずかしさもあったんですけど、何周か回っていい言葉はいい、という結論になりました。一言でわかりやすく希望を感じる言葉が、今はみんなに必要かなと思って決めましたね」
――今、AIさんの夢は?
「ずっと持っている夢は、平和を作りたいということ。近いところで言ったら『DREAM TOUR』が無事に終わればいいなと。自分の夢は目標と一緒で、ひとつ達成したらそのあとに新しい夢が出てくる。常に夢があったほうが動き方が決まってきますよね。それがないと、『明日どうする?』『何する?』みたいに迷ってしまう。夢があったらそれに向けて動いていくので、ゴールを作ってそれを達成するのはすごくいいなと思っています。最初の頃は『グラミー賞を獲りたい』とか、そういう夢もあったんですけど、コロナ禍で気づいたのは目の前のことをしっかりやっていきたいということ。できる目標を立てて、ちゃんと向き合っていきたい。『DREAM TOUR』では踊る予定で、それも頑張るのみ。素晴らしいショーを観せたいというのが目下の夢です」
輝いている人に出会ったら、まず自分の輝きを最大限に出す。自分が出せば、もっといい輝きをもらえるから
――本誌名『GLITTER』に掛けて、AIさんが輝き続けられる理由を教えてください。
「人との出会い……そして、出会った人からパワーを吸い取ることですかね(笑)。輝いている人に出会ったら、まず自分の輝きを最大限に出すんです。それで相手を楽しませる。喜んでくれたら相手が輝きを出してくるので、その瞬間、ぐわっといただく(笑)。自分が疲れていても輝きは出さないとダメ。自分が出せば、もっといい輝きをもらえますから」
――輝いている人と言ったら、どんな人を思い浮かべますか?
「うちの両親も素晴らしいんですが、妹は最高ですよ。いつも嫌な顔をしないというか、癒されるし、面白い(笑)。本当にみんな好きになる」
――いい人が周りに集まってくるのは、AIさんがいい人であるからだと思います。
「私はどちらかというと、近しい人たちに厳しいんです。今は特に感染対策については厳しいですよ。こういう仕事だし、厳しくせざるを得ないので。そういう意味では人にプレッシャーを与えがちかな(笑)」
――発売中のGLITTER vol.3のテーマが“セクシュアル”と“リレーションシップ”なのですが……。
「いいですね〜。そういう話、あんまりしたことないから(笑)」
――「セクシー」と聞いて、何を思い浮かべますか?
「『プリティ・ウーマン』(‘90年)に出てくるリチャード・ギア! 実業家エドワード・ルイスを演じる、リチャード・ギアね(笑)。余計なことしゃべらない、見た目で人を判断せず、自分が好きになったら優しくしてくれるとか……いやらしくないところがセクシー。私はいやらしさにはセクシーは感じないです」
――AIさん自身、セクシーな女性に憧れはあったりします?
「セクシーは……どこかに置いてきちゃった感じですね(笑)。あまり目指してはいないです。セクシーというよりは、かっこいい女性になりたいので」
――もうひとつのテーマは、“リレーションシップ”なんですが、パートナー求めるものは?
「パートナーはパートナーで好きにすればいいと思っているけど、リスペクトはしないとダメですね。夫とはケンカもしますが、一番のポイントは好きか嫌いか。好きだったらだいたいのことは許せますよね。何かきつい言葉を言いそうになるときは、『この言葉を言った後に、一生会えなくなっていいのか?』ということを考えます。もうひとつのポイントは、『災害やトラブルがあったときにこの人がどうするか?』ということ。私の場合は夫が、もし私が銃を向けられたとしたら、その鉄砲の弾を受けてくれると信じています。そういった信頼関係があるから夫婦として続いているのかもしれないですね」
■PROFILE■
AI
アメリカ合衆国ロサンゼルス生まれ、鹿児島県育ち。2000年デビュー。これまでに4度のNHK紅白歌合戦出場、第59回日本レコード大賞・優秀作品賞の受賞を果たす。2022年5月14日より、全国ツアー『AI“DREAM TOUR”』がサンシティ越谷市民ホール 大ホールよりスタート。
■INFORMATION■
『DREAM』(発売中)
〈収録曲〉
01.アルデバラン(NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』主題歌)
02.IN THE MIDDLE feat.三浦大知
03.THE MOMENT feat.¥ellow Bucks
04.Welcome Rain(アサヒスーパードライ×THE FIRST TAKE WEB CMタイアップソング)
05.First Time feat. RIEHATA(ネスレ日本「きっかけは、キットカットで。」CMテーマソング)
06.Lessons
07.BE WITH YOU(『東京建物』企業CMソング)
08.パパへ
09.WE HAVE A DREAM(書籍『WE HAVE A DREAM 201カ国202人の夢×SDGs』テーマソング)
限定盤 CD+Blu-ray ¥5,500(税込)
限定盤 CD+DVD ¥5,500(税込)
通常盤 CD ¥3,300(税込)
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『AI“DREAM TOUR”』
5月14日(土)サンシティ越谷市民ホール 大ホール
5月21日(土)大分iichikoグランシアタ
5月22日(日)宮崎市民文化ホール
6月5日(日)松戸・森のホール21
6月11日(土)佐賀市文化会館
6月18日(土)愛知県芸術劇場 大ホール
6月19日(日)四日市市文化会館 第1ホール
6月25日(土)滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール
6月26日(日)アクリエひめじ[姫路市文化コンベンションセンター]大ホール
7月2日(土)仙台サンプラザホール
7月3日(日)新潟県民会館
7月10日(日)東京国際フォーラム ホールA
7月21日(木)大阪・フェスティバルホール
8月6日(土)北陸電力会館 本多の森ホール
8月7日(日)高崎芸術劇場 大劇場
8月11日(木・祝)静岡市民文化会館 大ホール
8月14日(日)ザ・ヒロサワ・シティ会館
8月20日(土)・21日(日)札幌文化芸術劇場hitaru
8月27日(土)・28日(日) 西原商会アリーナ[鹿児島アリーナ]
9月3日(土)長崎ブリックホール
9月4日(日)福岡サンパレス
9月10日(土)けんしん郡山文化センター[郡山市民文化センター]大ホール
9月17日(土)神奈川県民ホール
10月15日(土)盛岡市民文化ホール 大ホール
10月16日(日)リンクステーションホール青森
10月22日(土)広島文化学園HBGホール
Words Hiromi Yamanishi / Edit Kaori Watabe