The Words from Transformers 変わりたいあなたの背中を後押し!トランスフォーマーたちの格言part2
「変わりたい!新しい自分になりたい!」という願望を抱きつつも、ためらいや不安から、なかなかその一歩を踏みだせない人もいるのでは?そんなあなたに向けて、見事なトランスフォームを遂げた著名人たちの格言を2回に分けてお届け。さまざまな葛藤や困難を乗り越えた彼女たちの言葉から、勇気をもらって。
川上なな実(かわかみななみ)
約3年前の川上なな実さん。
©kumagainaoko 写真集『すべて光』(工パブリック)より。
愛し愛されることそれが私の幸せ
これまではAVもストリップも、ファンのために頑張ってきたような感覚でした。でもコロナ禍で、ファンとのコミュニケーションの仕方が変わってしまった。それをきっかけに、「自分の幸せの形って何だろう?」と、改めて考えてみたんですね。「誰かのためではなく、自分のために生きるならば?」。それを自分自身に問い続けるうちに、愛し愛される関係を築ける人がひとりでも多く周りにいること、それが自分の幸せだなって気づいたんです。そこに近づくためには、もう新しい発見が得られなそうな環境からは卒業していこうと思いました。10年間続けていたセクシー女優の仕事からはもう十分経験を得たし、これ以上続けていても同じルーティンになることはわかっていたので、手放すことを決意しました。
みんな敵じゃなくて味方だった
俳優業に専念しようと思ったのは、『全裸監督』への出演がきっかけです。『全裸監督』では、今のままの自分の演技ではダメだということを痛感しました。AVの演技って、自分から心を動かして、自分で完結していくので、実はひとり芝居のようなものなんです。今までそういう芝居しかしたことがないうえに、私ってもともとすごく警戒心の強い人間だったので、せっかく山田孝之さんや伊藤沙莉さんといった素晴らしい俳優さんたちが私に向かって台詞を投げてくれても、その台詞や感情を受け止めきれずにいました。そんな私を見かねて、監督は「相手を信頼しながら台詞を聞きない」とアドバイスしてくださったんです。それで初めて、「みんな私からいいものを引き出そうとしてくれているんだ、みんな私の味方だったんだ」と気づけました。『全裸監督』公開後は、作品を見た方たちから「お芝居の才能があるね」と言葉をかけてもらえたことが本当にうれしくて。それまでは、アダルト業界の仕事をやりながらお芝居も両立するぞ!という意地があったんですけど、今後は俳優として結果を出していかないと、今まで期待してくださった方たちに失礼だなと思いました。
アダルト業界引退後の近影。
©kumagainaoko 写真集『すべて光』(工パブリック)より。
過去は私の大事なヒストリー
アダルト業界の職業に対する偏見や差別といったものは、残念ながら今でも存在します。それに対しての悔しさというのは、ずっとありました。だからこそ、セクシー女優やストリッパーだった私がどんどんステージアップしていく姿を見せることには意味がある。どんな過去があっても未来への可能性があるということを証明していきたいです。
ポジティブな言葉を放っていれば言葉が望む場所に連れていってくれる
私、“言霊”を絶対に信じているんです(笑)。自分に暗示をかけるようにポジティブな言葉を言い続けていれば、いつの間にか、理想とする現実にきっとたどりついているはずです。
PROFILE
1992年10月14日生まれ、福井県出身。元セクシー女優・ストリッパー。2023年秋には主演ドキュメンタリー映画『裸を脱いだ私』公開予定。セクシー女優・ストリッパーとして活動10年の節目となる2022年、アダルト業界を引退した川上なな実さん。演技力が評価され、2022年にはハリウッド共同制作ドラマ『TOKYOVICE』に出演。今、俳優として大きな飛躍を遂げようとしています。
大木亜希子(おおきあきこ)
30代になって本当の自分と出会えたと話す、現在の大木亜希子さん。
恥と自尊心の崩壊。地べたを這いつくばってたどりついた今
SDN48卒業後、地下アイドルをしながらも経済的に苦しくて、ホテルで清掃のアルバイトをしていた時期がありました。そのとき、私を応援してくれているファンの方と偶然すれ違ったことがあったんですね。でも、アイドルのときの私とはあまりにも姿が違うせいで、その人は私に気がつきませんでした。仕方がないこととはいえ、時と場所が違えば私は素通りされてしまう存在なんだなと……。その出来事があまりにも衝撃で、自分の新しい道を探っていかなきゃと強く思いました。その後、なんとか一般企業にライターとして就職できたのですが、当時の私は芸能界しか知らないまま25歳になってしまっていたので、名刺交換の仕方やビジネスメールの書き方など、社会人としての一般常識がまったく身についていない状態。だから、わからないことにぶつかるたび、上司から教わりながら学んでいくしかありませんでした。恥ずかしかったし自尊心はボロボロになるしで、20代半ばは地べたを這いつくばるような毎日でしたね(笑)。でも、それがあったからこそ、叩き上げでここまで来られたと思っています。
他人が自分の長所を気づかせてくれることもある
新しい生き方としてライターを選んだのは、アイドル時代の握手会で、ファンの方が「亜希子が書く文章はおもしろい」と言ってくれたことがきっかけです。芸能界ではブログやTwitterなどSNSの更新が大事なルーティンワークのひとつでした。でも、「今日もお仕事頑張ります♪」のような紋切り型の文章はつまらないなと思っていて、毎日140文字のツイートの中に、いかに自分を表現するかを考えながら更新を続けていたら、それを人に褒めてもらえた。もともと本を読んだり文章を書いたりすることが好きだったので、潜在意識には「いつか文章を書いて生きていきたい」という思いがあったんでしょうね。それをファンの方が掘り起こしてくれた。自分が気づいていない長所を、ある日急に誰かが教えてくれることを知った瞬間でした。
『シナプス』(講談社)。悩みながらも生きる、すべての女性たちへ向けた応援小説。
何を選んでも大正解!
会社員になっても自分をキラキラ魅せようと必死だった私は、元アイドルという肩書きを武器に、無駄なサービス精神を働かせていました。でも裏では、アイドルとして人気者になれなかった敗北感や、婚活していい男性と結婚しなきゃとか、お給料はこれくらい稼いでいなきゃという強迫観念を常に抱えていたんです。完全に“理想の自分”という呪縛にとらわれていました。そういうストレスがたまりにたまって、ついに決壊したのが28歳のとき。ある日、駅のホームで一歩も動けなくなってしまい、そのままストレスクリニックに駆け込みました。そのとき診察してくださった先生が、「人生は何を選んでも正解なんですよ。結果的にいつか本質的なところに戻ってきますからね」という言葉をくれたんです。今、人生の振り方に悩んでいる人も、こんなふうに考えれば怖がらずに先を歩けるんじゃないかと思います。
人生は一発勝負なんかじゃない
たとえ選んだ道の一歩先に虚無感があったとしても、3歩目は当たるかもしれない。また4歩目で間違っても、5歩目がある。道は何度でも選べます。私自身、女優もアイドルも花が咲かず、会社員もドロップアウトして、フリーランスのライターになって……そして今、作家として活動している。ひと晩で一気にトランスフォームはできないけれど、いつか点と点がつながって、自分の本質にたどり着いていることに気づいたとき、過去の経験も救われるのではないでしょうか。
PROFILE
1989年8月18日生まれ、千葉県出身。14歳で芸能界デビューし、ライターへと転身。処女作は『アイドル、やめました。AKB48のセカンドキャリア』(宝島社)。女優・アイドルとして活動していた大木亜希子さんは、紆余曲折を経てライターへとキャリアチェンジを果たしました。これまでに本を3冊出版し、近著である『シナプス』(講談社)は、30代女性を主人公にした初の創作小説。作家としての地位を確立しています。
Edit&Words Yuki Kimijima
※本記事は『GLITTER』vol.4(2022年5月6日発売号)に掲載されています。